地域医療構想と大学病院
明けましておめでとうございます。
皆さまにおかれましては,健やかに新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。いよいよ2018年が始まりました。今年の医療界では、診療報酬と介護報酬の同時改定が控えている上、来年予定される消費税10%への増税対策も喫緊の課題となっています。そのような中、大規模投資が必要な高度急性期病床を多く持つ大学病院はその生き残りをかけ、重大な岐路に立たされています。
これまで大学病院は、二次医療圏を超えて特色ある高度急性期医療を担ってきましたが、昨今国や県が推し進める地域医療構想、地域包括ケアシステムの中で、自病院がどのような役割を果たすのかにより、その病院の将来が大きく左右されるため、慎重な対応が求められています。それぞれの大学病院の置かれた状況により異なりますが、一県一医学部という大学病院は、高度急性期患者を集中させることができるかもしれません。しかし一方で、そうした県では今後訪れる少子高齢化の波をまともに被る大学病院も出てくると予想されます。これに対して、東京・大阪・愛知など都市部の大学病院では、二次医療圏内に大学病院が複数存在する医療圏や、大学病院以外にも高度急性期疾患を扱う大規模病院が存在する医療圏が多々見受けられます。このような都市部の大学病院は、今まで通り医療圏以外から多くの患者を集めるとともに、地域医療構想を踏まえた地域医療に色濃く関与していかなければならない大学病院も出てくるでしょう。
私ども愛知医科大学病院は、後者に当たると考えております。もともと地域との関係が深く、広域はもちろん地域の救急医療を支える役目を担ってきた病院であり、その延長線上に新しい地域包括ケアシステムが構築できないかと模索しています。ただ、今までのように三角形の頂点に高度急性期病院を置くシステムではなく、平面上で高度急性期病院を含め全ての病院、診療所、介護施設等をフラットに繋ぐ形のシステムを構築し、最終的には地域をこの医療ネットで覆えたらと考えています。
このような考えをお持ちの病院は多いと思いますが、次回の診療報酬改定が地域の医療システムを構築しにくい形で改定されますと、一層この改革が進みにくくなってしまいます。消費増税と併せて、地域医療にとって合目的的な政策が施行されることを切に期待しています。