大阪市北区の関西大学梅田キャンパスで9月23日、移植医療を考えるシンポジウム「あなたの家族、あなたの子どもの未来をどう描く?」が開かれた。移植治療の当事者家族や医療者らが自身の経験を語り、誰にでも起きうる「命をめぐる課題」について考えた。
国際移植者組織「TRIOJAPAN」(青山竜馬会長)などが主催。会場では、大学生や移植患者の支援者ら70人以上が耳を傾けた。
青山会長は、次女が特発性拡張型心筋症と診断され、アメリカで臓器提供を受けた。待っている時間はなく、苦渋の決断だったという。国内で命を救えるようにするため、「脳死についての教育が重要」と説いた。
長男が国内で心臓の移植手術を受けた森菜緒子さんは、いつ命が消えるかわからない状況で待ち続けた日々を振り返り、「誰にでも起きうること。臓器移植を他人事と思わず、提供の意思表示をしてほしい」と訴えた。
柔術家の白木大輔さんは、長女が拡張型心筋症で移植待ちをしている間に脳死状態になり、臓器提供を申し出た。
「担当医師らには力を尽くしてもらい、最期は娘との温かい時間を過ごすことができた。移植医療は暗いイメージだが、素晴らしいものだと知ってほしい」
公益社団法人日本臓器移植ネットワーク広報・啓発事業部の雁瀬美佐部長と、国立循環器病研究センター移植医療部の福嶌教偉部長を交えたパネルディスカッションも開かれた。
福嶌さんは、「救急の医師にとって患者が助からないと家族に告げるのはつらいこと。臓器提供の意思確認という次のステップに進むのは負担が大きい」と説明。アメリカや韓国のように脳死と判定された時点で、速やかに臓器移植ネットワークに連絡が行くシステムの必要性を訴えた。
シンポジウムは、さまざまな分野の専門家が集まって未来について対話をする同キャンパス主催のイベント「Future Meeting」の一環。青山会長の体験をつづった著書「なんでもない日はとくべつな日(渡航移植が残したもの)」出版を機に企画された。