「ともに歩み、支える」ために

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社会福祉法人恩賜財団済生会支部新潟県済生会 済生会新潟病院
本間 照 院長(ほんま・てらす)
1984年新潟大学医学部卒業。同大学第三内科、
新潟県立新発田病院、済生会新潟第二病院(現:済生会新潟病院)
消化器内科部長、同副院長などを経て、2021年から現職。


「より地域に頼られる病院にしたい」と抱負を語る本間照院長。限りある医療資源をどう生かせば、より改善できるのか。働き方改革や自身のさらなるキャリアなど未来をしっかりと見据えている。



深刻な地域救急医療

 新型コロナウイルス感染症は、地域の救急医療にも大きな影響をもたらした。「救急隊が4カ所以上に連絡してやっと搬送先が決まるという事態が、1日に6件程度起きています」。根本にあるのは、救急科の医師不足。これは県全体の問題でもある。「救急科がある病院が限られており、当院においても定年間近の医師と入職間もない医師の2人のみ。なんとか対応している状況です」

 コロナ以前から、内科、小児科、整形外科、産婦人科で2次救急の輪番体制を組んでいたものの、その中でも特に内科は人材が不足し、かなり逼迫(ひっぱく)している状況にあったという。

 多忙を極める一方、高齢のため当直できない医師が年々増加している。当直翌日の連続勤務も避けられない状況だ。「当院だけでは対処に限りがあります。一県に一大学医学部のため医師の派遣も難しい中、経営母体の違う各病院がいかに連携していくかが、今後の課題になっています」


チーム制導入や経験ある医師を活用

 そのような状況下でも、進めなければならないのが働き方改革だ。一案として挙げるのが、主治医制からチーム制への転換だ。「主治医は自分だから、と抱え込むと共倒れになります。もちろん、患者さんの意識改革も必要。私の先生ではなく『私の先生たち』と思ってもらいたいですね」

 現在、前例豊富な病院にヒアリングしつつ院内で協議している最中だという。「各科で認識にズレがあるのは当然ですし、各部署の長にもそれぞれ悩みがあります。気持ちをすくい上げ、共有することで足並みをそろえていけたらと考えています」

 より長期的な視点に立った働き方も模索する。「医療が高度に専門分化し、昔なら10人いればできた仕事が10人で回らない時代です。いわゆるゼネラリスト、総合診療科の必要性は大きいものの、救急と同様に人がいない。どうカバーしていくか」

 もう一つのアイデアは定年退職後のセカンドステージを活用する方法だ。「長い医師人生、いずれギアチェンジできるよう、一般内科の勉強を始めておくことも手です。経験を積んだ医師は、介護や福祉を含む幅広い視野で医療に携われる。働き続けることは、生きがいにもつながるでしょう」。専門分野以外に守備範囲を広げてもらえるよう話
し合っていきたいと語る。


素直な心と柔らかい脳と

 消化器内科を専門に、炎症性腸疾患の治療に長年携わってきた。「脳腸相関とも言われますが、お腹の病気には精神的なストレスが大きく影響しています。精神科領域もサポートしなければ、現代人の病気に対応しきれないと思います」

 一般病院で、精神疾患を持つ患者を受け入れるのはそう簡単ではないが、人は誰しも多かれ少なかれ不安定さを持っていると話す。「健康な人も、いつ心の病になるか分かりません。職員の手間や急性期病院としての役割を考慮すると理想ばかりは追えませんが、できる限りそのような方たちにも理解を示し、少しでも関わっていきたいでね」。困窮者に手を差し伸べてきた病院の理念である「ともに歩み、支える」にも通じる思いだ。

 院長として心掛けたいのは、アンテナは高く、フットワークは軽くすること。「そして、素直な心、柔らかい脳でいることですね」。最終目的をしっかりと定め、機に臨み変に応ずる心構えでいる。



社会福祉法人恩賜財団済生会支部新潟県済生会 済生会新潟病院
新潟市西区寺地280-7 ☎025-233-6161(代表)
http://ngt.saiseikai.or.jp/

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