奈良県看護協会 会長 平 葉子

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 新型コロナウイルス感染症が終息し、良い年になることを心からお祈り申し上げます。

 超高齢化がますます進展する中で、これからの医療の進むべき道は、「病気をとことん検査・治療する医療」から、「長い人生の生活を支える医療」への転換です。

 私の現役時代は、働き盛りの人たちが多く、患者さんを根治して社会復帰させることが病院の主な使命でした。そのためには、患者さんは医療者の指示のもと、治るまでさまざまな辛抱をしてもらっていました。

 しかし、これからは、長い人生において、加齢による病気・障害を抱えての「暮らし」を支えなければ、患者・家族を幸せにすることはできません。治療を受けた後、どのように暮らしていかれるのかを配慮した、「生活重視型医療」にシフトする必要があります。

 治療のみを最優先すると、超高齢であっても気管内挿管、人工呼吸等々の救命処置や各種ドレーン、輸液、機器の装着が実施されます。これらを安全に管理するためには、「身体抑制」をすることも増えてしまいます。

 家族の「できるだけのことをしてあげたい」という思いが、患者さんを「できるだけ苦しめる」ことにもなりかねません。また、これらの機械器具を装着した状態では、次に受け入れてもらえる病院や施設はなかなか見つかりません。

 治療を始める前に、「この治療はこの人の生活をより良くすることができるのか?楽に暮らすことに貢献するのか?」と、それぞれの患者・家族の抱える事情や価値観、生き方などに寄り添って、関係する多職種が集まって話し合う必要があります。すでに「倫理カンファレンス」として、定着している病院もあります。

 コロナ禍で、最近は話題に上ることが少なくなってしまった「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)=人生会議」を復活させ、もしもの時、どのような治療をどこまでやるのか、本人・家族も含めて繰り返し話し合い、共有しておかなければなりません。

 高齢者が新型コロナウイルスに感染した場合は、重症化する恐れが大きいので、治療に関する十分な知識を提供した上で、本人・家族がどこまでの治療を望んでおられるのかを前もって確認しておく必要があります。ただし、患者さんの気持ちは揺れ動くものなので、事前に話し合っていても、いざその時が来たら、最終的にしっかり意思を確認することが重要です。

 奈良県看護協会は、人生会議や倫理カンファレンスが定着するように、今後も活動を進めていきます。

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