昭和大学病院 病院長 相良 博典

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 明けましておめでとうございます。2020年はコロナ禍の対応で追われた1年になりました。本年は新たな転換期を迎える年になることを期待しています。

 「医療は医学の社会的適用である」と言われます。あらゆる社会活動の中で、医療はとかく特殊であると言われます。その特性には、次のような特徴が挙げられます。まず大量生産と異なり、医療は個別対応が必要です。これを「個別性」と言います。サービスの提供と利用が同時に行われるという「同時性」も特徴です。また、ある患者さんの呼吸機能を改善した治療法が、別の患者さんに効かない理由は、症状を共有する疾患の違いがあるからかもしれませんし、生理的代謝が遺伝的に異なっていることが理由かもしれません。このような「非定型性」も医療の特徴です。

 「緊急性」や「不確実性」も医療の特徴です。健康診断や慢性疾患であれば予測が成り立ちますが、急性疾患や慢性疾患の急性増悪の場合などに緊急対応が必要です。そして、この緊急性の評価は事後にしかできません。患者さんは、苦痛や障害などの不具合を持ち、加齢や終局的な死は免れるものではありません。生体の反応は常に変化し、様相は個体ごとに異なり一つとして同一のものはありませんし、医療の結果は一定せず、本質的に不確実性を帯びていると言ってよいでしょう。

 さらに、患者さんが有する苦痛や悩みは、それぞれ個別の遺伝的・地理的・環境的背景の影響として、患者さん個別の物語として存在しています。これは医療の「物語性」と言われます。つまり医療現場とは、患者さんの人生のさまざまな局面があらわになる生活の場として存在しているのです。

 このように複雑で、不確実な「医療」において、質の高い、患者満足につながる医療を提供するには何が必要でしょうか。医療の質は、医療サービスの場における患者さんの協力度や理解度などに依存し、患者さんとわれわれ医療者の相互作用の結果としてもたらされます。ですからわれわれにとっては、日々の患者さんの変化を観察し、状態を正しく把握すること、患者さんの喜怒哀楽を理解し、それに寄り添って考えることが何よりも大切なことだと考えます。

 われわれが提供する医療の質、患者さんの満足を決定するのは、医療連携の関係の質にあると言い換えてもよいと思います。医療の共同者として、あるべき姿をさらに発展させるべきかと思います。本年も、皆さまにとりまして素晴らしい年になることを祈念いたします。

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