新型コロナ(新型コロナウイルス感染症、COVID―19)の第3波が国内を襲っている。北海道、東京、大阪、兵庫で11月下旬から、新規感染者数が急増し、歯止めがかからない。各地で新規感染者、重症者、死者が過去最多を更新。年末年始を中心に冬をどう乗り切るか、正念場だ。
確保病床使用率が50%超す 自衛隊医療スタッフ派遣
北半球は冬季となって、ヨーロッパはじめ各国でも感染拡大がぶり返し、今春を上回る勢いだ。その後を追うように、国内でも北海道から拡大が顕著となった。拡大傾向は南下し、各地で深刻な状況となっている。
厚生労働省が1週間ごとに公表している新型コロナ患者療養状況の都道府県別データによると、同患者を受け入れるための確保病床に対する使用率は12月2日時点で、兵庫県65%、大阪府56%、北海道52%と高い数値を示した。
病院、高齢者施設などにクラスター(感染者集団)が発生した旭川市や大阪府などには、自衛隊の医療スタッフが派遣される。感染拡大した自治体の首長からは、「不要不急の外出を控えて」と自粛要請が相次ぎ、政府は経済との両立をめざした「GoToトラベル事業」の運用見直しに踏み切った。
看護師などの人手不足も顕在化。各地の医療現場では警戒し、感染拡大防止に当たっている。コロナ重症患者を受け入れている国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)では、院内の感染対策を徹底しながら、陰圧設備の整った専用病床で感染症専門医らが治療を実施している。
【北海道】GOTOを機に感染拡大 札幌中心に道内全域に
北海道医師会の長瀬清会長は11月30日、中村博彦・道病院協会理事長とともに道庁を訪れた。同医師会など医療関連11団体の連名で、国の観光支援策「GoToトラベル」など各種キャンペーンの見直しを求める要望書を提出した。
北海道では10月末ごろから新規感染者数が増加。11月9日には200人に達し、1日で300人を超えた日もあった。
長瀬会長は北海道での増加について「7月末からGoToトラベル事業が開始され、札幌を中心にした感染が徐々に道内全域に広がっていった。10月ごろまでは30代以下が7割を占めていたが、最近は30代以下が4割、60代以上の高齢者が3割を占め、幅広い世代で感染が広がっている」と懸念する。「感染拡大には急激な寒波、空気の乾燥、密閉した室内、気密性の高い家の造り、不十分な換気なども理由」と北海道ならではの環境も挙げている。
医療機関でクラスター多発 集団感染で医療従事者不足
札幌市や旭川市の医療機関や高齢者施設では大規模クラスターが複数発生している。特に医療機関では「患者数の増加や病床のひっ迫に加えて、集団感染による医療従事者の不足などもあって、交通事故や急病などの患者への緊急時の対応ができなくなる恐れもある」と危機感を募らせる。
広大な北海道独自の事情もある。「大都市以外の地域では医療従事者が少ないこともあり、ベッドがあったとしても十分に対応できない場合も出る。特に地方によっては医師一人という地域もある。そのような地域で感染者が発生すれば、札幌などの都市部に搬送せざるを得なくなり、長距離搬送による患者の状態悪化、周囲の感染リスクとともに、今度は大きな都市の病院の病床ひっ迫にもつながりかねない」。年末年始に向けての医療提供体制も懸念する。
【神戸市】院内感染防止との両立 専用病棟を新設
関西で、大阪府と並び感染拡大が顕著なのが兵庫県。神戸市内の新型コロナ治療の拠点、市立医療センター中央市民病院(木原康樹病院長、約800床)では、「10月下旬から11月に入って以降、(新型コロナの)患者さんが入院してくるスピードが、退院されるスピードよりも早くなったように感じます」という。
同院の救急車受け入れ台数は、年間約1万件。神戸市の新型コロナ重症患者を受け入れている。初めて陽性患者が入院したのは3月。その後、4月、5月には院内感染が起き、救急受け入れを制限する事態にもなった。
救急患者受け入れと、院内感染防止との両立を図り、新型コロナウイルス感染症病棟(36床)を新設。11月9日から運用を始めた。本館内にあった感染症の病床を専用病棟に集約。専用病棟専門の医師や看護師ら約100人が治療に当たっている。
専用病棟の特徴は、全病室に導入した遠隔モニタリングシステムだ。スタッフステーションからモニターを通して患者の様子を見ることができ、会話も可能。医療スタッフが患者に接する機会をなるべく減らして感染リスク抑制を図っている。