長野県厚生農業協同組合連合会 佐久総合病院
渡辺 仁 統括院長 兼 本院院長(わたなべ・ひとし)
1986年群馬大学医学部卒業。
近森病院脳神経外科、群馬大学医学部附属病院脳神経外科を経て、
佐久総合病院に入職。同院佐久医療センター院長などを経て、2020年から現職。
長野県東信地域の高度急性期から在宅まで担う佐久総合病院グループ。「病院完結型医療」から「地域完結型医療」への転換を目指した再構築事業を終えた今、組織をどう束ねていくのか。渡辺仁統括院長兼本院院長に聞いた。
地域住民とともに
四方を山に囲まれ、自然豊かなこの地で「農民とともに」という理念を掲げ発展してきた佐久総合病院。農薬中毒や農機具による外傷など農村特有の疾病の研究や、住民の健康教育に力を入れるなど常に新しい取り組みに挑戦してきた。
入職して30年、グループ全体を率いる統括院長兼本院院長として、この理念を継承し、次世代に伝えていく立場となった渡辺氏。ところが就任と同時に、国内で新型コロナウイルスの感染が拡大する。
「グループ全体で、この理念を統一して取り組んでいこうとした矢先でした。新人の顔も覚えられないままで、職員も不安を抱えていました。ただ、危機的な状況だからこそ、どう乗り越えていくか全員で考えていくことが必要だと感じ、職員にも伝えました」
「農民」というのは基本的な概念で、つまりは「地域住民とともに」という意味だという。
「少子高齢化、非正規雇用の増加、新型コロナの影響で格差が拡大しています。病院の理念の中には〝地域づくり〟という言葉もあります。地域の方たちが生きがいを感じて暮らせるよう、病院として何ができるかを考えたいと思います」
コロナ禍による影響
診療機能のさらなる充実を目的に、2002年から病院の分割再構築事業に着手。佐久市臼田にある本院の機能を分割し、2014年3月に同市中込に高度急性期を担う病院として佐久医療センターを開設した。2019年3月には本院の増築工事も完了し、およそ17年におよぶ大事業が一段落した。
それから間もなくのコロナ禍である。感染拡大を防止するための措置として受診抑制や入院制限、人間ドック受け入れの中止、手術の制限などを行い、経営困難な状況が続く。
「20年度は仕方がないと思っています。これは、どの病院も同じでしょう。今は21年度からどのような工夫をして経営改善をしていくのかを考えています」
コロナ禍にあってもグループ内や佐久地域医療ネットワークシステムなどによる患者の診療情報共有の連携を、今後さらに広め、強化していきたいと語る。
人が育つ環境づくりを
佐久総合病院では、1947年から毎年「病院祭」を開催。2020年5月に予定していた第74回は初の中止となった。病院祭は、地域交流を目的とする一方、職員の多様性、個性を尊重するために欠かせない行事だったという。「病院が継続するために最も大事なのは人です。人を育てる環境づくりや、多様性を受け入れる風土を、今後も大切にしていきたいと思います」
地方において医師不足は深刻だ。その中にあって初期研修医を多く確保できたのは、人を大切にする風土、そして人材育成推進室のサポートが大きい。「コロナ前は夏期の医学実習などを実施しました。現在もオンラインの懇談会を行うなど、当院をいかに知ってもらうか工夫を重ねています。また、研修医から要望が出たら『前例がないから』と否定せず、それに応えていく方針です」
76年という長い歴史の中で、常に挑戦し続けてきた。「新しいことに挑戦できる組織であることが大切だと思っています。誰とでも話しやすいフラットな人間関係がつくれる環境であれば、働きやすく、人も集まってくると信じています」
長野県厚生農業協同組合連合会 佐久総合病院
長野県佐久市臼田197 ☎️0267ー82ー3131(代表)
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