公立世羅中央病院
來嶋 也寸無 病院長(きじま・やすむ)
1999年大分医科大学医学部(現:大分大学医学部)卒業。
中国労災病院、米テキサス大学留学、
公立世羅中央病院整形外科主任部長、診療技術部長などを経て、2020年から現職。
目の前にあるタスクを徹底的にやり抜く
「目の前の仕事に対し、徹底的に調べて〝ねちっこく〟やるのが性分です」
そう言って笑みを浮かべる。2009年に公立世羅中央病院へ赴任し、18年からは整形外科主任部長の傍らで診療技術部長も兼任。人望を買われ、新設された部署で、責任者として病院全体の組織再編を担った。
「当時、メディカルスタッフの部門のうちいくつかが、組織図の中でツリー状になっていなかったので改善しました。上からの情報を風通し良く伝え、下からの不満や要望を吸い上げやすくするためです。この仕事の延長線上に、院長職もあると思っています」と語る。
今、取り組もうと考えているのが、病院機能評価の受審だ。周囲に病院が少なく、比較対象が少ない環境。「あまり良い言い方ではないかもしれませんが、自分たちでつくったルールが標準化され、文化として受け継がれがち。他と比べて自分たちはどのレベルにあるのか、強みや足りない部分を知ることが、前に進むための第一歩だと思います」
地域を守るためにまず職員の健康を考慮
院長としての最終目標は「地域を守る」こと。就任直後に、病院理念を「質の高い医療を提供し、地域を守ります」にリニューアルした。最優先で取り組むべき課題として掲げたのは、「職員の満足度向上」だ。
「心身ともに元気でなければ他人を元気にできません。まずは職員が元気であること。その先に患者さんのハッピーがあります。幸せの広がりが、おのずと地域を守ることにつながります。住む人が健康であれば世羅町はなくなりませんから、この先も存続できるよう、今から少しずつ種をまいていきます」
2000年に2万人弱だった人口は、2020年11月末現在で1万6000人弱。今後も減少が見込まれる。「たとえ人口が減っても、自治体病院は何としても維持しなければなりません。同時に、都市部と変わらない、質の高い医療が提供できる体制を整えることも必要です」。町の活力を担う一翼として、役割を果たしたい考えでいる。
「やすむ」けれど、ねちっこく一歩ずつ
整形外科医としての原点は幼少期。グラフィックデザイナーだった父の影響で家には画材や工作道具が数多くあった。「幼少期から細かい作業が好きで、当時の趣味がそのまま仕事になっています」。広島大学大学院時代は手外科班に在籍し、顕微鏡で神経を縫い合わせる細かな手術も手掛けた。
博士課程の論文テーマは、末梢神経の再生について。ラットの坐骨神経を切ってシリコン製のチューブの中で神経再生を促進させるなど、ここでも繊細な手技を駆使し、再生医療の先駆的な研究で、米整形外科学会年次総会の新研究者表彰を受賞した。
その後は研究の道に進むか、臨床を選ぶかで揺れたが、最終的には手先の器用さと粘り強さを、目の前の患者に向けることに決めた。「どうしたらこの人は幸せになれるか?を考えます。ひと工夫やひと手間を面倒くさがらないことが大事です」
「也寸無(やすむ)」という名は、父・直行さんが「自分は猪突(ちょとつ)猛進型だったが、息子には人生、休み休み歩んでほしい」との思いを込めて命名した。「休みながら、一歩ずつ。先は長いので、焦らず気張らず〝ねちっこく〟進んでいきたいと思います」
公立世羅中央病院
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