JA静岡厚生連 遠州病院
大石 強 病院長(おおいし・つよし)
1989年鹿児島大学医学部卒業。
浜松医科大学、米ハーバード大学、磐田市立総合病院、弥生病院などを経て、
2003年遠州病院入職、2019年から現職。
就任後の心境を問うと「正直、こんなに忙しいとは思ってなかったですね」と大石強病院長。これまで通り、外来、病棟、手術に携わりつつ、院内外での対応に迫られる毎日。サポートしてくれる周囲への感謝の気持ちが、原動力になっている。
総合病院としてパワーアップしたい
2003年に遠州病院に入職後、前院長で現在は名誉院長である水上泰延氏の仕事ぶりを見てきた大石強病院長。水上氏の先見の明には驚くばかりだったという。
「特筆すべきは、2007年の新病院移転の際に60床の回復期病棟を立ち上げたこと。急性期病床の削減を見据えた地域医療構想の考えを先取りしていたのかと、思い至りました」
その後も水上氏は診療科の充実や救急体制の再建を推進。2018年には専門医を迎えて、救急科を立ち上げた。「ようやく総合病院としての実態が整ってきたところ。私の役割は、この基礎を引き継いでプラスアルファの価値を肉付けしていくことです」
究極の目標は「急性期から在宅まで」
就任時に掲げたビジョンは二つ。一つは、救急医療のさらなる充実だ。
「2018年の救急車受け入れは4500台。救急科専門医が常駐したことで、日勤帯の救急受け入れはほぼ100%になりました。他の職員の意識も高まりつつありますが、夜間の応需率はまだ80%。これを何とか85%にまで高めたい」
目下の弱点は、脳外科を非常勤医で対応し常勤医がいないこと。加えて最近、脳神経内科医が2人から1人に減ったことも悩みの種だ。「この領域の立て直しは最重要課題の一つ。現在、策を講じている最中で、数年後には手術を再開できればと考えています」
救急の充実は、若い人材への訴求効果も高い。救急医の活躍ぶりに呼応するように、2019年の研修医受け入れではマッチングが10人にも上ったという。
二つ目のビジョンは、地域包括ケアシステムの確立。救急医療を中心としたインフローを増やすとともに、退院後の患者が満足して暮らせるためのアウトフローの充実を図る構えだ。2018年に立ち上げた入退院支援室を核に、試行錯誤していると語る。
「今後、回復期病床へのニーズはますます高まるでしょう。浜松市内唯一のケアミックス病院として、急性期から回復期、さらに在宅に至るまでの一貫した医療サービスを提供していきたいと思っています」
歴代教授の教えを実践笑顔と感謝を忘れない
小中高とサッカー少年だった大石病院長。中学時代に腰を痛めた経験が、整形外科医への道につながった。鹿児島大学卒業後は、浜松医科大学整形外科に入局。井上哲郎初代教授「医者たるもの紳士であれ」「病気を見ずして患者を見ろ」という教えが、自身のモットーとなったと話す。「患者さんに敬意を表し、必ず背広にネクタイで接すること。データだけでなく患者さんの話を傾聴すること。ずっと心掛けていることです」
2代目教授の長野昭氏から学んだのは、診断学の基礎である論理的思考と実臨床。3代目で現教授の松山幸弘氏からは「指導者のあるべき姿」を教えられた。「自分が率先して動き、態度で示さないと人はついてこないというシンプルな教訓です。実践はなかなか大変ですが、やるしかないと」
病院長になってから増えたのは笑顔、そして感謝の気持ちだとニッコリ。「医師だけでなく看護師、ヘルパー、事務、ボランティア、警備員など、あらゆる人と接する機会が増えました。それぞれが、病院のために頑張ってくれていることを実感します。笑顔で感謝すること。そして自分から動くこと。日々の積み重ねを大切にしたいですね」
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