2020年の年頭にあたり、謹んで新年のごあいさつを申し上げます。
2019年は地域医療構想の嵐が吹き荒れた1年となりました。特に厚生労働省が全国424の公立・公的病院の実名をあげ、再編統合を促したことは大きな社会的議論を巻き起こしました。一方で「政府の言う〝働き方改革〟を推進してどうやって今までの医療レベルを維持するのだ?」という疑問が頻繁に聞こえてきます。どの医療機関さまも今後の医療の行く末に大きな不安を感じながら診療に当たられていることと思います。しかし、こうした背景には医療の効率化と質と安全性の向上を両立せよという社会の要請があるのだと感じます。
今までわれわれは長時間勤務もいとわず、有給休暇も取らず、目の前の業務をこなすため当たり前のように過重労働を受け入れてきましたが、それが許されない社会になったことを理解しなければなりません。医療の安全性と質に対する社会の要求はますます高まるばかりであり、診療の結果に対する説明責任を果たさなければなりません。
病院経営も持続可能性を求められ、病院自体で適切な収支バランスを維持していかなければなりません。こうした社会からの相反する要求に対してわれわれはどう対処していったらよいのでしょうか。
今までの日本の病院は各部門の独立性が強く、医療機関全体で機能することが得意ではありませんでした。日本の医療は効率性が低いと言われています。いろいろな原因があると思いますが、主な原因の一つはそこにあるのではないかと私は考えています。
効率的に医療の質と安全性を向上させるためには医療機関全体で業務を管理統括し、業務の重複と欠落のない、整合性のとれた医療供給体制を構築する必要があると考えます。そして、そのためにはタスクシフティングと情報通信技術の活用を通じてチーム医療を推進することが重要です。
今、病院に求められていることは、個人商店の集合体から有機的なつながりのある企業体に生まれ変わることではないでしょうか。
さまざまな課題がありますが、一つずつ解決して病院として少しでも社会の役に立ちたいと思っております。今年も愛知医科大学病院を、どうぞよろしくお願いいたします。