次世代見据えた研究に注力 産婦人科病棟も刷新
時代に即したアップデートを続けている静岡県立総合病院。2017年に先端医学棟を新築し、リサーチサポートセンターを開設。翌年には産婦人科病棟をリニューアルと、次々に改革を打ち出す。
◎病気予防の情報発信拠点 大学院大学構想も
静岡県は、男女共に健康寿命が全国トップクラスの健康長寿県だ。同県は〝健康寿命日本一〞を目指し、病気にならない健康づくりのために「ふじのくに健康長寿プロジェクト」などを展開している。静岡県立総合病院でも、健康寿命を延ばす取り組みの一環として、先端医学棟にリサーチサポートセンターを開設。臨床や疫学研究に特化し、遺伝子解析、統計解析、検体の収集・保存・解析などを行っている。
2018年4月、同センター長に就任したのが宮地良樹京大名誉教授だ。「京大で社会健康医学専攻科設立に携わったこと、静岡出身であること、そして本庶佑先生からの拝命を受け、着任しました。臨床研究には統計や疫学の知識が不可欠なので、そういった意味でも貢献できると思います。また先端医学棟のワンフロアをすべて研究に使っていますが、このような病院はあまり類を見ません。資金や人材も潤沢で、とても有意義な研究ができるでしょう」と熱意をのぞかせる。
もう一つ、新プロジェクトとして「社会健康」を学ぶ大学院大学の開設準備も進んでいる。「開校は2年後を予定しています。主にビッグデータ、疫学、ゲノムコホートの三つを柱とし、主に医療専門職に入学してもらう構想です」
◎分娩の減少→集約化 将来見越しリニューアル
2018年月には、産婦人科病棟もリニューアルした。手術室の移設で空いたスペースを改装。約1200平方メートルだった産婦人科エリアを約2000平方メートルに拡張し、「マタニティーセンター」と改称した。
陣痛から分娩、回復まで一部屋で過ごすことができるLDRは全4室。2室はベッド、もう2室は畳で、すべての部屋にソファーと浴槽を完備。「助産院での出産スタイルを望まれる方も多いので、畳の部屋をつくりました。近い将来、フリースタイル分娩も可能になります。もちろん状況次第では促進剤も使いますが、患者さんと相談しながら、できるだけ自然に近いお産を、と考えています」(小阪謙三産婦人科部長)。
バックヤードもスタッフの動線が考慮された。各部屋は後方でつながっており、中央に手術室を備える。病室も大幅に手を入れた。4人用の大部屋は8室から5室に減らし、個室を5室から室に増やした。ミニキッチンなどを備えた特別室もあり、新病棟のオープン後は、分娩数も増加傾向にあるという。
産婦人科医不足が叫ばれ、産婦人科の閉鎖が増える中、産婦人科病棟の充実へかじを切ったのは、将来の産科集約化を見越してのことだ。「静岡県の分娩数は減少傾向にあり、静岡市では年間5千件を割りました。妊婦さんやご家族が安心感の高いお産ができるよう、ハード面ソフト面共に一層充実させていくことが、産婦人科を継続する医療機関には求められていると思います」と、小阪部長は意欲的だ。
◎産科医不足の解決策 基幹施設への準備進める
現在、静岡県には産科婦人科専門研修プログラムの基幹施設が2カ所しかない。県人口に対して、医師も施設も少ないのが現状だ。そこで、同院では基幹施設になる準備を進めている。今は、常勤医師9人が時間365日体制で勤務。医師は半数が女性だ。また、J│CIMELS(日本母体救命システム普及協議会)のベーシックインストラクターも4人在籍している。「今後はより多くの出産を受け入れ、優秀な産婦人科医の育成にも貢献したいですね」
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