静岡県立静岡がんセンター 高橋 満 病院長

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切れ目のない体制でAYA世代を支えたい

【たかはし・みつる】
1980年名古屋大学医学部卒業。愛知県がんセンター中央病院整形外科医長、静岡県立静岡がんセンター整形外科部長、同副院長などを経て、2017年から現職。

 整形外科のがん領域におけるキーワードに挙げられる「希少がん」や「AYA世代」。課題や現状について聞いた。

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―診療の内容について教えてください。

 当院の整形外科では「骨・軟部腫瘍」「骨転移」を診療の柱に置いています。

 ある臓器に発生したがんが、骨に転移するのが骨転移です。そして、「骨そのもの」にできる骨肉腫や軟骨肉腫といったがんのことを、原発性骨悪性腫瘍と呼びます。

 原発性骨悪性腫瘍は希少がんです。骨肉腫の新規患者数は全国で年間200人ほどと言われています。ユーイング肉腫はさらに少なく、年間で40人程度しかいないとされています。

 当院における原発性の新規患者数は年間15人程度です。これはがんを専門とする全国の医療施設の中では多い方です。

 骨肉腫の治療法については、1970年代以前は有効な抗がん剤がありませんでした。「見つけたら患肢を切断する」という方法が一般的だったのです。

 1970年代後半に新たな抗がん剤が登場すると術前化学療法という概念が定着し始めました。1980年代後半から1990年代にかけて、現在使用されている四つの抗がん剤による化学療法が確立していきました。

 カスタムメイドしかなかった人工関節はモジュラー方式に移行し、製作に要していた時間を大幅に短縮できるようになりました。患肢を切断せずに人工関節に置き換える手法が広まっていったのです。

 MRIの診断技術も進歩しました。病巣の範囲をより正確に特定し、広範切除によって患肢の温存が可能になりました。

―AYA世代の支援は。

 正確なステージングと治療法の確立で、治療成績は大きく向上しました。次の課題は患者さんの「QOLの向上」です。

 骨、軟部腫瘍の患者さんの多くは、15歳〜30代を中心とする「AYA世代」と呼ばれる方々です。骨肉腫の治療に使用する抗がん剤には、生殖機能に影響を及ぼす種類もあります。「生殖機能の温存を含めたQOL」への対応が求められているのです。

 当院ではAYA世代に特有の悩みや不安を解消するために、整形外科と小児科の連携による「AYA世代病棟」を設置しています。

 情報の共有化を図り、いずれの診療科でも患者さんをフォローできる体制を整えているほか、専門の看護師や医療ソーシャルワーカーらが患者さんとその家族を支援しています。

 2018年11月、静岡県がん診療連携協議会に「小児・AYA世代がん部会」が設置されました。当院と浜松医科大学、静岡県立こども病院が拠点となって、患者さんの成長に合わせた切れ目のない医療を提供するために、ネットワークを構築していきます。

―会長を務めた「第51回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会」(2018年7月)ではどんな議論を。

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 一般の整形外科疾患と同じように、骨転移の治療の標準化を目指して、日本整形外科学会ではさまざまな活動を進めています。

 新たな治療法を模索しています。臨床の現場で実践した治療法を紹介してもらい、今後の発展が期待できそうなものについては、標準化に向けて動いていきたいと考えています。

 幅広い視点から新たな発見やアイデアを吸収できればと、放射線治療医、作業療法士、理学療法士など多職種がディスカッションする場を設けました。

 画像診断と組み合わせたナビゲーション手術が注目されています。

 長年、腫瘍の切除縁についての議論がなされてきました。ナビゲーション手術の進化によって腫瘍の範囲を特定し、「正確に取り除く」手法の確立が期待されています。引き続きしっかりと検討していきたいと考えています。

静岡県立静岡がんセンター
静岡県駿東郡長泉町下長窪1007
TEL:055-989-5222(代表)
https://www.scchr.jp/


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