広島大学大学院医歯薬保健学研究科 整形外科学 安達 伸生 教授

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「生涯『自分の膝』で」その願いをかなえるために

【あだち・のぶお】
1988年広島大学医学部卒業。米ピッツバーグ大学留学、島根医科大学(現:島根大学医学部)附属病院学内講師、広島大学大学院医歯薬保健学研究院准教授などを経て、2016年から現職。

 広島大学大学院が三洋化成工業と共同で進める「革新的半月板損傷治療技術の創生研究」が、日本医療研究開発機構(AMED)による医療分野研究成果展開事業「産学連携医療イノベーション創出プログラムセットアップスキーム(ACT-MS)」に採択された。主導するのは、整形外科学の安達伸生教授。再生医療にかける思いを聞いた。

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―採択された研究内容について教えてください。

 ACT-MSは、大学の持っている「シーズ」を実用化するための支援制度です。われわれの教室は、先代の教授のころから運動器の再生に力を注いできました。今回採択されたのは、膝の中でクッションの役割をしている「半月板」に焦点を当てた組織修復・再生医療研究です。

 半月板には血行のある部分とない部分があります。血流があると、傷ができても皮膚などと同じように"くっつく"のですが、血流がないと治りにくい。そこで今は、半月板の血流のない部分を損傷した場合、傷ついたところを部分切除して痛みをとる方法が主流になっています。

 しかし、切除によって半月板が小さくなると、その後、膝に痛みが出たり、軟骨に負担がかかったりする。変形性膝関節症にもつながります。そこで、可能な限り半月板を再生させようと考えたのが、今回の研究のきっかけです。

 組織を修復・再生するためには「細胞」、細胞が増殖するための「足場」、「成長因子」などいろいろな因子があります。これまでは、それらを集めて培養し、移植するのがいわゆる「再生医療」でした。

 今回の技術にはポイントが二つあります。一つは、採取した組織を細かく切断する技術を確立し、培養せずに"組織のかけら"を移植すること。これによって、従来は組織の採取と移植の計2回必要だった手術を1回に減らし、患者の負担を軽減することができます。

 もう一つは、移植の足場として、三洋化成工業の機能性タンパク質「シルクエラスチン」を使うということです。このタンパク質は細胞親和性が高く、弾性に富んでいるのが特長で、スポンジ、フィルム、液体、ゲルとさまざまな材型を選択できるだけでなく、細胞の分化・増殖の足場として、損傷部の修復を促進することもわかっています。

 すでに修復の足場として、シルクエラスチンが有効であると確認できたため、現在は、臨床応用に向けて、研究を進めています。将来的には、関節鏡手術や注射によって組織の採取や移植ができるようになるかもしれません。また、筋肉や軟骨の損傷など、さまざまな組織の再生にも応用できるのではないかとも思っています。

―なぜ、「再生医療」に注力されるのでしょう。

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 私の専門の一つは膝関節外科。大きなターゲットは、レントゲン上の異常がある人が3000万人にも上ると言われている「変形性膝関節症」です。そのうち、痛みなどの症状があるとされるのが1000万人ほど。患者さんが多く、ニーズがあります。

 高齢の方の変形性膝関節症が重症化すると、人工関節手術の対象になります。近年は良い製品が出て治療成績も安定していますし、手術件数も右肩上がりで増えています。でも、患者さんは「本当は、最後まで自分の関節で歩きたい」と言います。それをサポートする治療を目指したい―。これが、私が再生医療に取り組む理由です。

 教室には、約40人のメンバーが所属しています。膝・股・肩関節外科、手の外科、脊椎・脊髄外科、腫瘍外科などのグループにわかれ、それぞれがトップレベルの臨床、研究ができていると自負しています。

 今後も、臨床と基礎研究を両立させ、患者さんの願いに耳を傾けて寄り添っていきたいと思います。その結果、世界に向けて新たな治療法を発信できればうれしいですね。

広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 整形外科学
広島市南区霞1-2-3
TEL:082-257-5012(代表)
https://home.hiroshima-u.ac.jp/seikei/


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