ロボット手術を軸に県の泌尿器科診療に貢献
1994年弘前大学医学部卒業、同泌尿器科入局。同附属病院臨床教授などを経て、2018年から現職。
2018年8月、6代目に就任した古家琢也教授。「県の泌尿器診療の発展に貢献していきたい」と思いを語る。ロボット支援下手術の推進を軸に、岐阜大学におけるがん治療の広がりが期待されている。
―泌尿器科領域の現状を教えてください。
領域は大変幅広く、また患者さんのQOLに直結している点が大きな特徴です。併せて高齢化が進んでいることで、疾患も多様化しています。
腎臓、膀胱(ぼうこう)、前立腺、精巣のがん。結石、前立腺肥大などによる排尿障害。感染症や副腎腫瘍による内分泌疾患。そして、腎不全や腎移植までカバーします。
中でも力を入れていきたいと考えているのは、がん診療です。がん診療連携拠点病院としての役割を果たさなければなりません。
弘前大学にいたころ、術前化学療法とロボット支援下手術を組み合わせた集学的治療の開発などに力を注ぎました。
患者さんにとって、できるだけ低侵襲な治療を提供したいという考えに基づくものです。ここ岐阜大学でも、患者さんのために、これまでの経験を生かしたいと考えています。
―がん治療に対するアプローチは。
国立がん研究センターが公開している部位別の新規り患数(2014年)を見ると、男性では前立腺がんは約7万4000例。4番目に多いのです。
2012年、ロボット支援下による前立腺全摘除術が保険適用となり、施行病院が全国に広がりました。岐阜大学では、毎月6例から8例ほどを実施。多ければ、年間で100例程度に達します。
2018年4月、膀胱がんが保険適用。ロボット手術は難易度が高くそこまで広がっていません。患者さんにとって低侵襲な治療であるため、術後の回復への影響は少なくありません。
このがんは予後の悪いがんとして知られ、特に筋肉に浸潤している場合の5年生存率は、半分程度ではないでしょうか。
幸い、私は保険適用になる以前からロボット支援下手術に取り組む環境にいました。ここ数年は、年間20例から30例の膀胱がんの手術を施行しており、そのうちロボット手術は約15例です。本講座でもロボットによる膀胱全摘除術は、今後大きく増加すると見込んでいます。
また、術前に抗がん剤を使用することで再発を抑える効果も上がっています。
―今後、どのようなことに力を入れていきますか。
膀胱を全摘した場合、その後、尿を体外にどのような方法で出すのか。患者さんにとって、大変重要な問題です。
例えば尿路変向術を施行して排泄の手段を新たに作る必要があり、一般的には回腸導管造設術などが用いられています。
私たちは、患者さんが自分自身で尿を出すことができる「新膀胱」の手術に積極的に取り組んでいきたいと考えています。
患者さんの「回腸」を使って、膀胱を作る「回腸新膀胱造設術」です。弘前大学が確立した方法で、非常に高い技術が求められます。
私たちが確立を目指しているのは、ロボットを使って体腔内で完結する技術です。世界的にも、新膀胱の造設をロボットで施行できる医療施設は、ほとんどないようです。
しかし、ロボット手術を用いれば、合併症や感染の軽減などにつながる可能性があります。術式としてきちんと確立させることも大きな目標です。
そうすれば、その技術は次の、そして次の世代にも伝わっていくでしょう。
「シンプル」で、そして「再現性」のある術式の確立を目指すことも外科医の役割の一つなのです。
特定の地域で、特定の人だけが受けられる手術。そのような段階にとどまっていてはいけないのです。
岐阜大学大学院医学系研究科 病態制御学講座 泌尿器科学分野
岐阜市柳戸1-1
TEL:058-230-6000(代表)
http://www.med.gifu-u.ac.jp/gifuuro/