横浜市立大学医学部 産婦人科学教室 宮城 悦子 主任教授

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ワクチン接種と検診で子宮頸がん死は予防できる

【みやぎ・えつこ】
1988年横浜市立大学医学部卒業、同産婦人科入局。1995年同大学院医学研究科卒業(医学博士)。横浜市立神奈川県立がんセンター婦人科医長、横浜市立大学産婦人科准教授、同附属病院産婦人科部長などを経て、2017年から現職。

 産婦人科医として20年以上のキャリアを有する横浜市立大学医学部産婦人科学教室の宮城悦子主任教授。婦人科悪性腫瘍、細胞診の専門家として、近年は子宮頸がんワクチンの定期接種にまつわる意見を積極的に発信し、一方で産婦人科医のワークバランスの確保などにも尽力している。

―ワクチン接種の状況を。

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 子宮頸がんワクチンは2013年4月に国の定期接種となりましたが、接種後に慢性的な疼痛と運動障害などが報告され、この年の6月以降は厚生労働省から「積極的な接種勧奨の一時中止」の通達が出され現在に至っています。それまでは公費助成で70%以上の接種率を確保していましたが、今はほぼゼロに近い状況。日本の子宮頸がんの検診率も約40%と先進国の中ではきわめて低く、50歳未満の死亡者数は近年増加傾向にあります。20〜49歳の死亡者数の推移は2000年が509人でしたが、2015年は583人で14.5%増加しています。

 子宮頸がんはワクチンを思春期に接種して、成人になったら子宮がん検診(細胞診)を受けることで死亡率の減少につながります。これは多くの国の統一見解で、WHO は2014年から毎年のように子宮頸がんワクチンに関する新たな安全声明を出し、接種率が低迷している日本を名指しして批判するという異例の事態も起こっています。

 これまでHPVワクチンの信頼性が国内で取り戻せなかった要因として、国内における有効性に関するデータの不足があります。

 しかし2018年10月、新潟大学の榎本隆之教授らの研究グループによって、HPVワクチンの感染予防効果の質の高い研究結果が公表されました。これは新潟県内の住民基本検診として2014年〜2016年にかけ子宮頸がん検診を受けた20歳〜22歳の女性1814人を対象に、HPVワクチン接種の有無と、ワクチンの予防対象となるHPV16・18型、それ以外のがん化ハイリスクHPV型の感染率を調べたものです。

 結果、子宮頸がんの60%〜70%の原因となるHPV16・18型の感染を予防する2価ワクチンでは、感染予防の有効率が90%以上でした。またHPV 31・45・52型に対しても感染予防効果を示しました。ワクチン接種歴の正確さなど精度管理がなされている住民基本検診の中で得られた結果からの解析ですから、信頼性の高いデータといえます。

 ワクチン再開に向けて重要なのは、市民とメディア、行政、医療・教育・研究関係者の理解と協力を得て、HPVワクチンの効果と安全性を示した国際的なデータや新潟大学の研究結果などを伝えていくことです。

―「働き方改革」が話題です。教室内のワークライフバランスは。

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 大学以外の関連病院は11施設あり、2003年度と2013年度の医師数の比較をしています。2003年度では8施設の医師数はそれぞれ4〜6人でしたが、2013年度はほとんどの施設は10〜12人に増員しています。顕著なのが医師の男女比で、2003年度は8施設の平均で女性医師は38.1%でしたが、2013年度は67.5%と大幅に増えました。

 状況が改善した理由には、産婦人科の集約化と、高い訴訟リスクを回避するための無過失補償制度(産科医療保障制度)の実現、また勤務医の報酬の見直し(分娩費値上げや分娩手当増額など)があります。

 一方、学会の調査で2006年の分娩実施率の男性医師と女性医師を比較すると、卒後2〜16年の15年間の平均では女性が66%、男性が82.6%。しかし11年目の女性医師は45.6%まで落ち込んでいました。

 ただ、2013年の同様の調査では、11年目の女性医師の分娩実施率は65.7%と、大きく回復しています。まだ不十分な育児中の支援などを進め、働き続けやすい環境整備を推進していきたいと思っています。

横浜市立大学医学部 産婦人科学教室
横浜市金沢区福浦3-9
TEL:045-787-2800(代表)
http://www.ycuobgyn.jp/


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