婦人科腫瘍領域を軸に技術と知識を磨き上げる
1996年京都大学医学部卒業。兵庫県立尼崎病院(現:兵庫県立尼崎総合医療センター)、公立豊岡病院組合立豊岡病院、米デューク大学客員研究員などを経て、2017年から現職。
4代目を務める松村謙臣主任教授の専門は「婦人科腫瘍」。若手にも積極的に経験を積む機会を提供し教室全体の技術レベルの向上を図っている。「手術の安全性が高まり、満足度の高い治療につながっている」。そんな手応えをつかんでいるという。
―どのような歴史を重ねてきたのでしょうか。
当教室は1974年、近畿大学医学部の創設と同時に開設。初代主任教授として野田起一郎先生を迎えて誕生しました。野田先生は医学部の立ち上げに尽力し、後に学長も務められた方です。子宮頸がんの診断、治療をはじめ、専門領域である婦人科腫瘍学の発展に大きく貢献されました。
2代目の星合昊先生(在職期間:1994年〜2012年)は不妊症、子宮内膜症が専門。早期に腹腔鏡下手術を導入し、当教室の強みの土台が築かれました。現在でも実績を伸ばし続けています。
そして、婦人科悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術やロボット支援下手術の最前線で活躍された、3代目の万代昌紀先生(同2013年〜2017年)。2017年4月に4代目主任教授に就任した私は、先生方が確立されたものを受け継ぎつつ、さらに技術と安全性の向上を目指しています。
例えば、2018年4月に、それまで先進医療として行っていた「腹腔鏡下広汎子宮全摘術」が保険適用となりました。早期の子宮頸がんに対する低侵襲手術として、欧米などでは広く普及しています。
開腹手術と比較して患者さんの負担が少なく、術後の回復が早いといった利点がありますが、医師には極めて高度な技術が求められる手術です。しかも、多くのケースで手術が長時間に及びます。
当教室には、腹腔鏡下広汎子宮全摘術に対応できる医師が5人います。長時間の手術を複数人でカバーすることで安全性を高めています。また、得た知識と経験を教室内で共有しており、医療の質の底上げにつなげています。
―育成の方針について教えてください。
キャリアの長さにかかわらず、どのような立場の人であっても、対等にディスカッションする。そんな雰囲気が当教室の特徴の一つだと思います。
日常的に教室内でのコミュニケーションが活発だからこそ、何か気づいたことがあれば、若手も積極的に提案することができます。それが結果として医療の質の向上、患者さんの安全の確保につながっていると感じています。
この教室にいるメンバーの多くは、一般の病院での勤務経験を経て、さらに学びたいという意欲をもってやってきた医師たちです。他の医療機関での技術指導を依頼されたり、見学の申し込みが増加傾向にあったりと、学びの成果が着実に現れているようです。
こうした形での外部との交流のほか、2018年10月、大阪南部の医療機関が連携した研究会をスタートさせました。産婦人科領域に関わる医療者による情報交換などを通して、互いに技術を高め合うことを目的としています。
―これから力を入れていくことは。
一つは、術後の病理診断の精度をさらに高め、より良い治療方針の決定に役立てていくことです。定期的に「病理カンファレンス」を開き、症例について活発に議論しています。
また、放射線科の医師と共に「画像カンファレンス」をスタートしました。診療科を越えた取り組みを進めることで、診断能力のアップを目指します。
近畿大学には、優れた基礎研究を進めている研究室が多くあります。現在、卵巣がんのゲノム解析や、アジア人に多く発症するとされる卵巣明細胞がんの腫瘍免疫といったテーマで共同研究を実施しています。これからコラボレーションの可能性をもっと広げていきたいですね。
近畿大学医学部 産科婦人科学教室
大阪府大阪狭山市大野東377-2
TEL:072-366-0221(代表)
http://www.med.kindai.ac.jp/gyne/