看護師の資格取得が地域医療のレベルアップに
1975年九州大学医学部卒業、同第一外科(現:臨床・腫瘍外科)入局。山口赤十字病院、東国東広域病院 外科などを経て、1982年国家公務員共済組合連合会千早病院。診療部長、副院長の後、2014年から現職。
千早病院には約40人の資格取得看護師が在籍する。病院や地域にどのようなメリットがあるのか。病院内での働き方や今後の育成方針と合わせて、千早病院の明石良夫院長と山本美子看護部長に話を聞いた。
―認定看護師や専門看護師などの資格を持つ看護職の数は。
明石良夫院長(以下、院長) 現在非常勤のスタッフを含めて約140人の看護師が在籍しています。その中で資格を持っているのは40人弱です。
山本美子看護部長(以下、看護部長) 看護部は「科学的な看護を実践する」という理念を掲げています。実現には、しっかりと専門分野を理解した上での看護が必要です。認定看護師と専門看護師は資格を保つためにも継続的な学習やスタッフ指導の実績が必要なので、資格取得者がいることで看護の質が上がると期待しています。
―資格取得看護師はどのような働き方を。
院長 他のスタッフをまとめるリーダーの役割があります。私たちは、資格取得者が資格を最も生かせる形で就労できるようにと人員配置を考えています。
看護部長 例えば、がん化学療法看護認定看護師はがん化学療法を受ける患者さんが多い外来で働いています。がん看護専門看護師は連携室に所属し、訪問看護への同行や、他院でがんに関するセミナーを開催しています。資格取得で得た知識は、院内だけにとどめるのではなく、他の病院や施設にも広めているのです。
院長 他にも骨粗鬆(しょう)症マネジャーの資格を持つ看護師は整形外科医と連携して出前講座を開いています。参加した高齢者に、骨粗鬆症の具体的な予防やロコモ体操などを広めました。
―看護師の資格取得は医師や患者さんにどのようなメリットがあるのでしょう。
院長 医師に対して声をかけづらいイメージを持つ患者さんもいます。日常的に接している看護師のほうが話しやすいと感じて、医師には聞きにくいことを看護師に聞いているようですね。資格を持った看護師がいれば、私たち医師としても安心して患者さんの対応を任せられます。
看護部長 実例で言いますとがんに関する資格を持つ看護師が、窓口でがんの相談を受け付けています。他の病院で診療を受けている人や、患者さんのご家族などが来訪し、医師には聞きづらいことやわざわざ聞くことではないと感じていることを気軽に聞きに来てくれています。
―今後の看護師育成の展望を教えてください。
看護部長 私たちが目指しているのは地域に貢献できる病院です。これからは病院と、在宅で療養している患者さんをつなぐ看護師を育てたいと思っています。
現在、訪問看護ステーションに、当院のスタッフを研修に送り出しています。病院で治療を受けた患者さんが自宅に戻り、どんなふうに生活し、どんな思いで病気と向き合っているのかを理解してもらいたい。研修から戻ったらそれを院内外の看護師にも広め、病院内だけでなく地域全体のレベルアップにもつなげてくれたらと願っています。
院長 地域包括ケアシステムが登場し、地域との連携が重要になっています。当院は急性期病院ですが、地域包括ケア病床も導入し回復期としての機能も引き受けていこうと思っています。この地域の住民にとって身近な病院になるのが今の方針です。看護のあり方も地域に寄り添ったものになっていくのだと思います。
国家公務員共済組合連合会千早病院
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