安全で質の高い医療に"やさしさ"を宿らせて
「講演会でサインを求められたのは初めてですよ」と語るのは、ゲームマスターの「D・平田」こと平田幸一病院長。ゴシックな世界観の初期研修医向け採用サイト「Dの血族」(http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-m/kensyui-boshu/d/)公開による反響は予想を大きく上回るものだった。思い切った戦略も印象的な獨協医科大学病院の現在、そして今後を聞いた。
―とてもユニークな試みですね。
「Dの血族―君だけの能力を手に入れないか?―」は、精神神経医学主任教授で、臨床研修センター長の下田和孝先生のアイデアが軸となっています。
当初、なかなか賛同を得られないかもしれないとも思ったのですが、意外にも「面白そうだからやってみよう」という流れになりました。このような企画を実現できる「雰囲気の良さ」も、獨協医科大学の特徴の一つだと思います。
ウェブサイトの効果はすぐに実感できました。これまでと比較してアクセス数の伸びが違いますし、問い合わせの件数もどんどん増えています。講演会で若いドクターから「サインをください」と声をかけられたことにも驚きましたね。
2019年には、獨協医科大学病院「本体」のウェブサイトのリニューアルにも着手できればと考えています。
―積極的にさまざまな取り組みを進めています。
2016年4月、初代教育センター長として志水太郎先生を迎えて(2018年4月より主任教授)、国内ではまだ数少ない「総合診療医学・総合診療科」を開設しました。志水先生は、アメリカをはじめ海外での診療や教育経験が豊富で、総合診療の分野において第一線で活躍しています。
開設して以降、総合診療医学の活動の幅は着々と広がっています。「地域医療学」など、地域包括ケアシステムを見据えて他の医療機関や行政とも連携した教育を展開しているほか、今後はいったん現場を離れた医師の再教育にも力を入れていく計画です。
医師臨床研修マッチングは昨年フルマッチ、今年も中間発表では5位(2018年9月現在)。教育面の強化が実を結んでいる結果だと思います。
診療面では2018年4月「脳卒中センター」、5月「糖尿病センター」、6月「ロボット手術支援センター」、そして8月に「アレルギーセンター」を設置しました。
主に子どもの食物アレルギーを対象とするアレルギーセンターは、栃木県が指定する唯一のセンター。また、脳卒中センターでは脳卒中専門医を中心にt-PA治療(血栓溶解療法)、血管内治療にも対応しています。
私が脳神経内科教授で日本脳卒中協会栃木県支部長でもある立場から、県のスポーツチームのサポート、また選手たちの協力を得て予防の啓発活動などにも取り組んでいます。
病院敷地内にある473室のホテル「ホスピタルイン獨協医科大学」の活用も進めていきます。在院日数を短縮化して引き続きホテルに滞在していただきながら治療を継続したり、インバウンドで受け入れたりといったことをイメージしています。
―病院を取り巻く状況をどのように見ていますか。
引き続き、センター化した部門の充実を図っていきます。同時に注視しなければならないのは、高齢の患者さんが増加し、地域包括ケアシステムの構築が進行する中で、いかに「本当に大学病院の医療を必要としている人」を受け入れていくことができるか。
中小病院、かかりつけ医の先生たちの機能分化を進めて、重症度に応じた医療システムを整備していく必要があると強く感じています。当院でも安全で質の高い医療を維持するのはもちろん、「やさしさ」も提供できる。そんな病院でありたいと考えています。
獨協医科大学病院
栃木県下都賀郡壬生町北小林880
TEL:0282-86-1111(代表)
http://www.dokkyomed.ac.jp/hosp-m.html