機能強化を進め社会復帰を後押し
カマチグループの「首都圏第1号」の病院。急性期病院が充実している一方で、「回復期リハビリテーション需要」に供給量が追い付いていないのが現状だ。そうした中で患者の「生活の再建」に向けて機能強化を進めている八千代リハビリテーション病院。興津貴則院長の思いとは。
―地域の状況についてどう捉えていますか。
2017年4月、同じカマチグループである下関リハビリテーション病院(山口県下関市)から当院へ移りました。関東圏の状況を見て、回復期リハビリテーションに対するニーズが高まり続けていることを、ますます強く感じているところです。
この周辺の急性期病院が扱う症例として脳血管疾患の割合が大きいこともあって、当院が受け入れているうちの8割ほどがそうした患者さん。全体としては重症度の高い患者さんが多い傾向です。各専門職が連携し、365日体制で効果的なリハビリテーションの提供に努めています。
リハビリテーションの本来の目的は「生活の再建」にあります。機能訓練室はもちろん、病院の内外、さらに市街地での歩行などを通して、在宅に復帰した後の「実際の生活」を明確にイメージした動作訓練に取り組んでいます。
また、年間を通じて季節のイベントなどを開いています。スタッフと患者さんが交流して楽しい時間を共有できると同時に、「起き上がって過ごすこと」を習慣化するための後押しにもなると考えています。
―近年の動きは。
2017年に83床から97床の増床が決定し、増改築を経て2018年6月、全180床となりました。
合わせて新設したのが「脊髄損傷リハビリ室」です。交通事故、高所からの転落、転倒などによって脊髄がダメージを受けることで、手足のまひや内臓の障害などを引き起こすことがあります。
当院では下肢にまひが残った方を対象にしたリハビリを提供しています。専門的に脊髄損傷リハビリを実施している施設は、この地域はもとより、全国的にも多くはありません。
患者さんの中心は比較的若い年齢層で「働き盛り」の世代です。ですから、社会への復帰を前提とした訓練をしっかりと重ねられるよう環境を整えました。
脊髄損傷リハビリ室は患者さんのこれからの生活空間を再現したワンルームタイプの空間です。上肢をうまく使ってトイレや浴室に移動したり、ベッド上で体を起こしたりといった、実際の生活を意識した訓練が可能です。
また、再び働き始める上で、クルマの運転ができるかどうかは非常に重要なポイントです。脊髄損傷リハビリ室では、クルマの乗り降りや運転、車いすの積み込みなどの練習にも取り組むことができます。
―大切にしているのはどのようなことでしょうか。
患者さんから笑顔を引き出すために大切なのは、私たち自身も笑顔を心がけることです。患者さんのモチベーションや満足度を引き上げる土台となるのは、やはり「明るい笑顔」と「誰にでもあいさつすること」。
当院の外観はカラフルでしょう。気持ちを明るくするデザインとちゃんと釣り合うように、院内の雰囲気もにぎやかなのです。
ただひたすらリハビリに没頭するだけではなくて、患者さんにも医療者にも少し気持ちに余裕があった方がいいと思います。きっと細かい部分にも目が行き届くようになるでしょう。
今後、心臓リハビリの導入などもイメージしています。下関リハビリテーション病院にいた頃に大きな成果を上げていますから、「これからもっと必要になる」と確信しています。
心臓リハビリの知識や経験は、セラピストたちの幅を大きく広げるに違いありません。より総合的な視点をもつ人材育成につなげたいと思っています。
一般社団法人巨樹の会 八千代リハビリテーション病院
千葉県八千代市米本1808
TEL:047-488-1555(代表)
http://www.yachiyo-reha.com/
蒲池 眞澄【かまち・ますみ】
カマチグループ創設者、現:医療法人財団緑野会理事長、現:社会医療法人財団池友会理事、現:一般社団法人巨樹の会会長
九州大学医学部卒業。虎の門病院、九州大学大学院医学研究科、下関市立中央病院、福岡大学医学部を経て、1974年、山口県下関市で救急指定の「下関カマチ医院」を開院。1981年北九州市小倉北区に「小文字病院」、1987年福岡市東区に「福岡和白病院」を開設し院長に就いた。2003年から巨樹の会会長、2018年4月からは緑野会理事長も務めている。
【カマチグループ関東エリア 病院一覧】(※開設順)
- 八千代リハビリテーション病院(回復期180床)
- 所沢明生病院(急性期50床)
- 明生リハビリテーション病院(回復期111床)
- 新上三川病院(急性期38床/回復期171床)
- みどり野リハビリテーション病院(回復期118床)
- 蒲田リハビリテーション病院(回復期180床)
- 宇都宮リハビリテーション病院(回復期96床)
- 小金井リハビリテーション病院(回復期220床)
- 赤羽リハビリテーション病院(回復期234床)
- 松戸リハビリテーション病院(回復期120床)
- 千葉みなとリハビリテーション病院(回復期156床)
- 原宿リハビリテーション病院(回復期332床)
- 五反田リハビリテーション病院(回復期240床)
- 新久喜総合病院(ICU8床/HCU8床/一般急性期186床/回復期98床)
- 江東リハビリテーション病院(回復期206床)
- 東京品川病院(HCU8床/一般急性期178床/回復期110床)