在宅を支える軸として都心の地域包括ケアを
立地は都心の一等地である「原宿」。急性期後の患者を受け入れ、在宅復帰を目指す回復期リハビリテーション医療を提供する。在宅復帰率は、開設以来90%前後を維持。他の医療機関や福祉施設とも連携し、地域包括ケアシステムの一翼としても期待される。
―都心部で回復期リハビリテーション機能を提供することの意義は。
最大のメリットは仕事帰りやちょっと出掛けたついでなど、患者さんのご家族が気軽に立ち寄れるアクセスであることです。
患者さんにとって、回復期のリハビリはとても大変なものです。ご家族が毎日のように顔を出し、日々の小さな進歩を見つけて励ますことが、大きな心の支えになります。
ただ、立地に恵まれている分、経営的に言えばチャレンジングであることは間違いありません。当然ですが、診療報酬は都心部も地方も同じ。患者数が等しければ、土地代も人件費も抑えられるエリアで事業を展開した方が、ビジネスとしては有利でしょう。
でも患者さんの側に立てば、ご家族の移動の負担はできるだけ少ない方がいいでしょう。また、「いつでも来てもらえる」という安心感もあります。そんな環境に病院があることが重要だと思います。
東京の中心部にあるというイメージから「差額ベッド代が気がかりだ」とおっしゃる方もいます。
当院の全332床のうち差額として2万円程度の個室料を設定しているのが86床。二つの特別室でも10万円程度で、この地域としては非常に差額を抑えています。できるだけ幅広い患者さんを受け入れていきたいと考えています。
―どのような点に力を入れていますか。
患者さんがモチベーションを維持し、積極的にリハビリに励む。そんな環境づくりを、多職種によるチームが患者さんを支えながら進めています。
例えば、玄関前のロータリーの周囲にある散歩道にはベンチや「あずまや」を設置しており、患者さんとそのご家族、スタッフ、ときにはペットも一緒にのんびりと過ごしている光景を見かけます。
当院の「卒業」が近づいてきた患者さんは、原宿の町を歩く実地訓練も行っています。当院が設定した散歩コースを運動療法士と一緒に歩くほか、バスに乗車することもあります。
当院にはリハビリテーション科の医師以外にも、急性期病院で豊富な経験を積んだ神経内科医や脳神経外科医、心臓外科医などが勤務しています。術後の管理など、常に身体的な状況の的確な把握に努め、急性期直後からのリハビリを可能としています。
今後は「回復期リハビリテーション」の役割について、地域の方々や医療関係者も含めて、広く理解してもらうことが重要ではないかと考えています。
「2025年問題」も迫り、総人口に対する高齢者の割合はさらに大きくなっていきます。
脳血管疾患や循環器疾患などの治療を急性期病院で受け、私たち回復期リハビリテーション病院が、一人一人に合わせたプログラムで集中的なリハビリテーションを提供する。
在宅に復帰した後も必要に応じてさまざまな医療・福祉サービスを利用していただきながら、住み慣れた地域で最期まで過ごす。
こうした地域包括ケアシステム構築の流れの中で、当院としては新たに外来機能の整備を目指すとともに、訪問リハビリテーションの動きを活発化させていきたいと考えています。
当院では、渋谷区の要請で土曜日に「開放日」を設けて地域のリハビリ患者さんを受け入れています。こうした自治体との「協働」の機会なども増えるでしょう。各所との関係をしっかりと築きたいと思います。
一般社団法人巨樹の会 原宿リハビリテーション病院
東京都渋谷区神宮前6-26-1
TEL:03-3486-8333
http://www.harajuku-reha.com/
蒲池 眞澄【かまち・ますみ】
カマチグループ創設者、現:医療法人財団緑野会理事長、現:社会医療法人財団池友会理事、現:一般社団法人巨樹の会会長
九州大学医学部卒業。虎の門病院、九州大学大学院医学研究科、下関市立中央病院、福岡大学医学部を経て、1974年、山口県下関市で救急指定の「下関カマチ医院」を開院。1981年北九州市小倉北区に「小文字病院」、1987年福岡市東区に「福岡和白病院」を開設し院長に就いた。2003年から巨樹の会会長、2018年4月からは緑野会理事長も務めている。
【カマチグループ関東エリア 病院一覧】(※開設順)
- 八千代リハビリテーション病院(回復期180床)
- 所沢明生病院(急性期50床)
- 明生リハビリテーション病院(回復期111床)
- 新上三川病院(急性期38床/回復期171床)
- みどり野リハビリテーション病院(回復期118床)
- 蒲田リハビリテーション病院(回復期180床)
- 宇都宮リハビリテーション病院(回復期96床)
- 小金井リハビリテーション病院(回復期220床)
- 赤羽リハビリテーション病院(回復期234床)
- 松戸リハビリテーション病院(回復期120床)
- 千葉みなとリハビリテーション病院(回復期156床)
- 原宿リハビリテーション病院(回復期332床)
- 五反田リハビリテーション病院(回復期240床)
- 新久喜総合病院(ICU8床/HCU8床/一般急性期186床/回復期98床)
- 江東リハビリテーション病院(回復期206床)
- 東京品川病院(HCU8床/一般急性期178床/回復期110床)