公益財団法人復光会 垂水病院 山本 訓也 院長

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依存症患者とともに  一歩ずつ、光差す方へ

【やまもと・のりや】 1981 大阪医科大学医学部卒業 京都大学精神神経科研修医 1983 関西青少年サナトリューム精神科常勤医 1995 垂水病院副院長 1999 同院長

 住宅街から小さな森をくぐり抜けた場所にある垂水病院。60年ほど前、全国でも数少ない依存症治療専門の病院として開設され、今春、装い新たに生まれ変わった。

―病院の成り立ちや現状について教えてください。

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 終戦後、覚せい剤やヘロインの乱用が拡大しましたが、取り締まりはあっても医療に手を挙げる病院はありませんでした。そんな中、1952年に厚生省(当時)のОB有志が立ち上げたのが復光会。翌年には船橋市に総武病院を設立し、中毒性の薬物依存などの治療を始めました。

 さらにその8年後、関西の拠点として兵庫県や神戸市に働きかけて開設したのが当院です。時代の変遷とともに薬物からアルコール依存に重点が移りましたが、20数年前に県立光風病院(現:県立ひょうごこころの医療センター)にアルコール病棟が完成。以降、両院で診療する体制になりました。

 当院ではアルコール依存症の診療はもとより、兵庫県下の薬物依存に関わる診療をほぼ一手に引き受けています。並行して、一般精神科の外来・入院診療も行っています。昨年度の新規入院患者数は467人で、男性が約8割。内訳は、麻薬・覚せい剤が7%、アルコール他依存症が71%、一般精神疾患が22%。外来新患者総数は352人で、内訳はおおむね入院と同様です。

 依存症治療は、個人精神療法だけではうまくいきません。当院は伝統的に、開放的な環境の中でチーム医療を実践してきた経緯があります。多職種連携が根付いていて、それぞれが患者さんに接する機会は他と比べて多かった。病気がなんとか良くなって、自分が失ったものに気づいたとき、いろいろな人とつながっていることが希望になると思っています。

 依存症は脳の病気ですから、モラルや司法を盾に治せるものではない。自助グループにつないで、回復するまで寄り添い傾聴することで、前向きな気持ちを引き出すようにしています。 家族へのアプローチも欠かせません。共依存も多く、家族も深い傷を負っている。家族の会は、自分たちができることの限界を知る機会でもある。悩みに共感し、継続してエンパワーメントしていきます。

 アルコール依存症は躁うつ病や統合失調症とも絡み合っている例が多々あります。ケースバイケースで治療戦略を立て、家族サポートを含めて対応する。それが当院の強みだと言えるでしょう。治療していると、患者さんが大きく変わる場面に立ち会えることがあります。そこにやりがいを感じますね。

―3月に病院を新築。今後の展望は。

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 289床のうち105床が個室で、浴室も精神科では珍しく個浴。まずは患者さんの安らぎを優先し、見守りつつリスク管理するのがコンセプトです。

 急性期、亜急性期、開放、療養型、認知症対応の5病棟がありますが、単一疾患で固めるのではなく、例えば内気な人向けのゾーンなど、治療環境は柔軟に整えます。

 今後の課題は高齢化への対応。入院患者は今や60、70代は普通で80代も増加。アルコールの禁断症状であるせん妄状態や意識障害も、長引きがちです。

 さらに認知症を併発している場合、家族も施設も敬遠するので、実に悩みどころです。認知症対応病棟の整備はこれからですが、意欲のある認知症専門医を常勤に迎えて進めていければと思っています。

 アルコール性の認知症は治療である程度生活能力が向上することがあります。中には一人暮らしが可能になる方も。入院後、次の行き先を見つけるまでに、一定期間をかけて回復させるプログラムを作りたいですね。

 加えて、デイケアや訪問看護も活用しつつ、依存症の枠を超えた幅広い精神疾患にもトータルに対応していきたいと思っています。

公益財団法人復光会 垂水病院
神戸市西区押部谷町西盛566
TEL:078-994-1151(代表)
https://www.tarumi-hospital.jp/


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