独立行政法人国立病院機構熊本医療センター 精神科 渡辺 健次郎 統括診療部長

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自殺企図の再発防止に取り組む精神科救急の最後の砦

【わたなべ・けんじろう】 1980 熊本大学医学部卒業 同精神神経科研修医 1988 同大学院卒業 1989 県立宮崎病院精神科医長 1995 国立熊本病院(現:国立病院機構熊本医療センター)精神科医長 2012 国立病院機構熊本医療センター精神科部長 2017 同統括診療部長・地域医療連携室長

 「24時間365日断らない救急医療」をモットーとする国立病院機構熊本医療センター。その中にある精神科は、県内で唯一ともいえる救急対応ができる総合病院精神科であり、その果たす役割は大きい。

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―精神科関連の救急医療の実態を教えてください。

 2017年度の救急外来における精神科関連の患者数が3456人。救急患者の総数が1万7922人なので約2割を占めています。県下には、救急病院であっても精神科がない、あるいは精神科の病院であっても身体疾患への対応ができないところがほとんど。まさに精神科救急の最後の砦(とりで)が、当院なのです。

 患者は熊本県全域、県外からも受け入れています。「24時間365日断らない救急医療」をモットーにしていますが、実は"断わることができない"というのが実態です。

 当院は、550床のうち精神科が50床という規模があり、精神科に関係する救急患者は精神疾患に骨折、イレウス、肺炎といった身体疾患を合併している方が約2300人、精神疾患主体の方が約800人、自傷・自殺企図の方が約400人。特に、この自傷・自殺企図による搬送が年々増えてきており、対策に乗り出しています。

―自殺企図者への対応は。

 自殺による死亡者は全国で減少傾向にありますが、当院では自殺企図で搬送される患者が、若い世代を中心に増えています。これは、発達障害を含め対人関係のスキルが乏しい若い世代が生きにくいという社会的な問題、熊本の場合は2年半前の熊本地震の影響もあるのではないかと私は考えています。

 自殺企図の患者は、身体的治療をすれば終わりというわけにはいきません。精神的な対応をしないと、再度自殺を図って戻ってきます。精神科的な対応をすることで再企図を防止することが重要です。

 そのために、当院では「自殺危機介入チーム」を編成し、自殺企図の患者ほぼ全員に対して精神科医が診察を行い、再企図を防止するための対策を行っています。またこのチームが中心となって、一般の救急病院でもある程度精神科的症状がある患者に対応するための教育コース「PEEC」を開催しています。さらに院内外の医師、看護師、保健師、救急隊員、行政職員などが集まる救急症例検討会「自傷・自殺問題カンファランス」を開催して、自傷自殺再企図防止についての意見交換も行っています。

 自殺企図の患者の多くは、かかりつけ医を持っています。救急で運び込まれた後、かかりつけ医との連携は欠かせません。当院は1996年から開放型病院として医科・歯科合わせて1864人の登録医と密に連携しています。検査結果や画像データの共有、年2回の連絡会など、さらに連携を深めていきたいと考えています。

―救命救急センターとして、高い評価を得ています。

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 当院の救命救急センターは県内初の「日本救急医学会指導医指定施設」に認定され、2017年度の全国救命救急センター充実段階評価では総合評価で全国16位、九州で1位の評価をいただきました。

 センターの充実のためには院外もですが、院内の連携も欠かせません。当院は、1日の平均在院患者数が500人、平均在院日数12.5日と、全33科にわたり多くの患者が入院しています。精神科医、専門看護師、臨床心理士などからなる「精神科リエゾンチーム」を昨年5月に結成し、各病棟における精神科的問題に対応しています。統括診療部長として、人員配置はもちろん、全科が垣根のない環境で、救急医療に取り組むことができるよう努めていきたいと思っています。

独立行政法人国立病院機構 熊本医療センター 精神科
熊本市中央区二の丸1-5
TEL:096-353-6501(代表)
http://www.nho-kumamoto.jp/section/seishin.html


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