小児の在宅移行を後押し"橋渡し役"を存在意義に
地域唯一の障害者病棟を持つ二日市徳洲会病院は、その対象を小児患者にも拡大。難しいと言われている小児患者の在宅移行の現状や、病院での取り組みを、今嶋達郎院長に聞いた。
―3年ほど前、障害者病棟を小児患者にも本格拡大した背景は。
私は医師に成り立ての頃、小児外科に勤務していました。重症心身障害児の主な受け入れ先は、長期入所ができる施設か、急性期病院。しかし、どちらもベッドの空きがほとんどありませんでした。在宅移行が検討されますが、家に帰ったとしても、保護者が24時間、目を離さずにケアするのは難しい...。そんな状況を目の当たりにしていたので、当院で重度障害児を受け入れることができないかと考えたのが、適用拡大のきっかけでした。
当初は職員たちから反対されました。小児科の経験がある看護師も少なく、「わからない=怖い」という思いがあったのです。
まず、お風呂で溺れて脳に障害を負った2歳の子を受け入れました。実際に子どもに関わり、無垢(むく)な笑顔や無邪気さに触れるうちに、反対していた職員たちも前向きに変わっていきましたね。
現在は7床、個室を含めると最大で10人の小児患者を収容できます。重度障害がある成人と小児を同じ病棟で診ている病院は珍しいと思います。
―どのような子たちを受け入れているのでしょうか。
私たちが受け入れている重症心身障害児は3通りに分けられます。
一つ目のパターンは、大学病院や基幹病院で治療した後、在宅医療の許可が出たものの、家族に慣れてもらうための期間が必要なため、すぐには移行できない小児患者です。家族は心の準備が必要ですし、患者さんが使う器具の知識もなければいけません。その準備期間として、受け入れています。
二つ目は、急性期病院での治療が終わり、転院などを予定している子どもたちです。次の施設にまだ空きが出るまでの間、当院で預かります。
最後は、レスパイト入院です。在宅で過ごす小児患者の家族が急な事情で子どもの面倒を見ることができない場合や、家族の心身のリフレッシュのために受け入れます。
当院に入院している小児患者には基本的に「治療」をしません。小児科専門医がいないこと、スタッフが小児の「治療」には習熟していないことが大きな理由ですが、それ以上に「中間施設である」ことを、存在意義にしているからです。
治療が必要な状態であれば小児科がある基幹病院で診てもらい、当院は治療を終えた子が施設や在宅へ移行するまでを支える。小児病床は7床しかありません。長期入院によって中間施設として機能できなくなると、また小児病棟で見たような子たちが増えてしまう。患者さんのご家族にも終身の入院はできないことをご理解いただいています。
―自宅への移行の状況は。
実は、当院から自宅へと移行できた例は多くありません。スムーズに戻ることができる子は、そもそも中間施設がいらないからです。病院側が自宅療養可能だとお勧めしても、ご家族の踏ん切りがつかないという場合も多くあります。私たちが許可を出せる状態と保護者が「大丈夫だ」と思う状態にはギャップがある。それを後押しするために私たちのような機関があるのです。
基幹病院から自宅へと移る患者さんは以前より増えていると感じます。きょうだい児が体調を崩したり、家族が急に看護できない状況になったりしたときには当院がフォローする。それを知って、「それなら頑張ってみよう」と挑戦する人も増えていくと思います。そういう意味では、在宅移行のお手伝いができるのではないでしょうか。
医療法人徳洲会 二日市徳洲会病院
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