"ウロギネ"の体制充実で女性の悩みを受け止める!
女性に特有の骨盤臓器脱や尿もれ。「家族にも相談できない」「どこで診てもらえばいいのか分からない」など、悩み続けている患者は少なくない。岐阜赤十字病院ウロギネセンターの三輪好生医師は「生活指導なども含めて包括的にサポートしていくことが必要」と提言する。
―現状は。
ウロギネコロジーとは「ウロ(Urology:泌尿器科)」と「ギネ(Gynecology:婦人科)」を組み合わせた言葉。両方の診療科の専門知識をもって女性特有の症状を診療します。
「3〜4人に1人の割合」と言われるほど、女性の尿もれは多いと考えられています。しかし、泌尿器科領域では非常にマイノリティー。専門としている医師は少ないのです。
また、尿もれの方は膀胱や子宮、直腸が垂れ下がって膣から出てしまう「骨盤臓器脱」を伴っている頻度が高い。なぜなら、どちらも「骨盤底の緩み」が原因だからです。本来は産婦人科の領域ですが、治療法がなかなか確立されてこなかった背景があります。
早くからウロギネが定着している欧米では「出産経験のある女性の骨盤臓器脱は4割超」「80歳までに10人に1人が尿もれ、もしくは骨盤臓器脱の治療を受けている」との調査報告もあるようです。
泌尿器科と婦人科の「境界線」にあるこれらの疾患をもっとカバーしようと、日本でウロギネが本格的に注目され始めたのは、ここ10年ほどでしょうか。高齢化や女性のライフスタイルの変化などに伴い、治療のニーズが高まっているのは間違いないでしょう。
当院が開設している電話相談にも一定の反響があり受診の後押しになっているのではないかと思います。専門機関はまだ限られるものの、少しずつ広がりつつあると感じています。
―治療について。
当院では「骨盤底ケア外来」を開設。骨盤底の緩みが軽度の場合は、保存療法として生活指導や骨盤底筋トレーニングで症状の軽減や悪化の防止に努めます。せきやくしゃみなどの際に尿がもれてしまう腹圧性尿失禁が、これで改善する方もいます。
骨盤底を支えているじん帯が伸び切っていたり、筋肉の膜が裂けてしまっていたりと「骨盤底の構造そのものが壊れている」ケースで手術を検討します。
例えば、2014年に保険適用となった「LSC(腹腔鏡下仙骨膣固定術)」は、損傷してしまったじん帯や筋膜を「メッシュで補強する」方法です。腹腔鏡手術のため、午前中の手術の場合、夕方にはベッド上で起き上がることができますし、翌日には歩けるようにもなる。早ければ2日後には退院可能です。
現在、骨盤臓器脱に対する手術として非常に期待されている手術です。新たに導入したいという医療機関も多く、私自身も、さまざまな施設で指導に取り組んでいるところです。
ただ、患者さんによってベストな選択肢は異なる。年齢やニーズ、術後の性生活の有無なども含めてメッシュを使わない手術、膣をふさぐのみの手術など、さまざまな方法があります。あくまでも患者さんの体やライフスタイルを踏まえて治療法を提示しています。
―今後の取り組みは。
昨年、当ウロギネセンターでは「行動療法統合プログラム」を作成し、提供をスタートしました。国内で初めての試みです。
疾患の正しい知識をはじめ、治療法の説明、困っていることのヒアリング、減量や栄養指導、そして「最終的に目指すゴール」などを聞き取り、個別にアレンジを加えたプログラムを提供します。ヘルスケアの意識を高めるきっかけにもなると期待しています。
ウロギネセンターは「手術がすべて」ではありません。この領域に関わるあらゆる悩みを受けとめることのできる体制を目指したいと思います。
岐阜赤十字病院
岐阜市岩倉町3-36
TEL:058-231-2266(代表)
http://www.gifu-med.jrc.or.jp/