血液腫瘍内科を強みに"ほぼ在宅、時々入院"
「熊本第一病院」「合志第一病院」の二つの病院と、一つの機能強化型在宅療養支援診療所、さらには訪問看護ステーションを有する特定医療法人萬生会。河北誠理事長は、「ユニークな法人ができつつある」と語る。"生き残り"に必須のオリジナリティーは、どのように醸成されてきたのだろうか。
―地域包括ケアに力を注いでこられました。
「ほぼ在宅、時々入院」が目指す姿です。
私がこの病院に赴任したのが1999年。その3年後、この場所に熊本第一病院が移転しました。訪問診療や訪問看護といった在宅医療に取り組むようになったのは、そのしばらく後のことです。
現在、在宅療養支援診療所には2人の医師が所属し、訪問看護ステーションの看護師は24人。夜間は、二つの病院がオンコール体制を敷いて対応しています。
法人内全施設の医師や看護師などが患者さんに関する必要な情報を共有するため、イントラネットを構築。訪問看護師は全員タブレット端末を持って移動し、患者の情報を入力・閲覧できるようにしています。
看取(みと)りもしています。まだまだ病院や施設で亡くなる方が多いですが、自宅での看取りも年々増えてきています。
―なぜ在宅を。
厚生労働省が主導する在宅移行の流れがあり、診療報酬・介護報酬も、強力に在宅を推進していく方向です。在宅のニーズ、重要性は増し、今後もそれは続くと考えています。
一つの診療所で訪問診療や看取りを一手に担おうとしたら、資金的にも人員的にも負担が大きいでしょう。でも、われわれが持っている病院や診療所、訪問看護などの機能を有機的に組み合わせれば、効率的に、患者さんや家族の要望に応えることができる。持続可能な「在宅医療提供システム」ができあがってきています。
―熊本第一病院に、緩和ケア病棟も開設されました。
今年6月、個室の一部を改修し、緩和ケア病棟としての運用を開始しました。血液・腫瘍内科の医師が中心となり、ケアに取り組んでいます。
当法人の病院は、両方とも、白血病や悪性リンパ腫など血液腫瘍内科系疾患の患者さんが多い。抗がん剤や放射線による治療が奏功し、寛解状態になる患者さんが増えてきているものの、緩和ケア病棟への入院を必要とする患者さんもいます。
経費の問題などもあり、ケアミックス型病院で、われわれのように血液悪性腫瘍の方を積極的に受け入れている病院は多くありません。でも、地域に1カ所ぐらいこういう施設があってもいいでしょう。輸血が必要な在宅患者さんにも、対応可能です。
―2018年度の目標に「働き方改革」を掲げられていますね。
当法人は、産休育休からの復帰率が非常に高い。組織としても、産休と育休をしっかり取得して、復帰することを推奨しています。
1日の勤務時間は7.5時間で、週休2日制。祝日も休みです。ただ、そうやって環境を整えていても、看護師や介護スタッフの求人への応募が少ない。残業を減らし、年休を取得するよう職員に伝えていますが、年休取得率もなかなか上がってきませんね。
そこで昨年、サービス付高齢者向け住宅「サンセリテ月出」では、思い切った取り組みをしました。職員に交代で5日間の休みを取らせたのです。
限られた人数しかいないため、どこかにしわ寄せがいくのでは、と心配しましたが、数十人の小規模な職場でお互いに顔が見える関係だったからか、思いのほかうまくいったようです。すぐには難しいかもしれませんが、こういった取り組みが、病院にも広がってくるといいと思っています。
特定医療法人萬生会
熊本市南区田迎町田井島224
TEL:096-370-7333(熊本第一病院)
http://vansay.jp/