診断から治療まで IVRの先端を行く
各診療科から依頼された撮像に基づいて病巣を精緻に読影する「画像診断」と、エックス線や超音波像を見ながら体内に細い管を入れて治療する「IVR(画像下治療)」の両方を手掛ける。先端のIVR技術を導入、患者に寄り添う医療を行っている。
―教室の特色を。
モットーは「診断から治療まで」。放射線科の基本である画像診断、そして画像診断を応用したIVRを車の両輪ととらえ、精度の高い画像診断を行い、質の高いIVRを行うというのが当教室の特徴です。
附属病院には総合画像診断センターとIVRセンターを設け、心臓を除く各領域で先端治療を実施。外来での診察から画像診断、治療、術後のフォローまで一貫して担っているのが強みです。
画像診断では、3テスラを含む4台のMRIと8台のCTを駆使。超音波(エコー)検査も放射線科で担当しています。
臓器別では、脳神経と胸部・腹部・泌尿生殖器、血管の各領域に分化。脳神経領域では、外傷に伴う神経線維の損傷を可視化するという新たな撮像方法にも取り組んできました。
担当医師は各診療科のカンファレンスにも参加し、患者さんに関する情報を共有します。読影だけではなく、各科の医師とディスカッションできるよう、治療法の十分な知識を持っていることが大事。それが「診断から治療まで」につながります。
―IVRでは長い歴史があります。
先代の打田日出夫先生が国内におけるIVRのパイオニアの一人。年間のIVR件数は約1300件に上り、日本でトップクラスです。
当教室のIVRの歴史は1980年、肝がんの動脈塞栓術から始まりました。ステントは1980年代後半から導入。2000年にはステントを人工血管で覆ったステントグラフトの治験もわれわれが中心となって推進しました。2006年に薬事承認が下りた後の第1例も私どもの担当です。
―医療機関の枠を越えてIVRについて考える「NEXTシンポジウム」を立ち上げられました。
設立の目的は二つ。IVR治療の高いレベルでの標準化と、IVRの手技や血管疾患全般についての教育の推進です。
中心メンバーは全国各地の大学や病院に所属する中堅以上の血管外科医、放射線科医。各医療機関でIVRを行っていますが、施設を越えた情報交換を行う、また実際の症例をライブで中継しながら議論する必要があると考えたのがきっかけです。
11月2日(金)には奈良市内で第1回シンポジウムを開催します。IVRがより安全で効果の高い治療法として発展することを目指して、議論ができる会にしたいと考えています。
―放射線科医の魅力とは。
画像を通して臨床医とは違った視点で患者や病気を見ることができ、治療法でも各診療科と議論できます。IVRでは、直接患者さんに接して治療にまで関わることができます。患者さんに寄り添い、感謝されるとモチベーションがさらに上がります。
放射線科領域は、近年、目覚ましい発展を遂げてきました。活躍の場も広がっています。しかし、放射線科の医師の数を他国と比較すると、国内のほかの診療科に比べて相対的に少ない。米国の3分の1ほどにとどまります。
当教室には今年、新卒と他施設からの途中入局を合わせ、5人が加わりました。ただ、それでも十分だとは考えていません。患者さんの高齢化が進む中、侵襲が少なく入院期間も短いIVRはこれからの医療に不可欠です。若い人に1人でも多く来てもらうよう、放射線科の魅力をアピールしていきたいと思います。
奈良県立医科大学放射線医学教室
奈良県橿原市四条町840
TEL:0744-22-3051(代表)
http://www.nara-radiology.com