難治性の疾患に経験とエビデンスで挑む
創設から45年を迎えた「血液・免疫・感染症内科学(旧:第一内科)」。5月、4代目として医局のかじ取りを引き継いだ竹中克斗教授は「感染症に精通する人材を育て、地域に輩出していきたい」と語る。
―就任後の感触はいかがでしょうか。
私がいた九州大学第一内科と当医局にはとても深い縁があります。1973年に創設された当医局の礎を築いた初代教授の小林讓先生、2代目教授の藤田繁先生は、ともに九州大学第一内科の出身でした。
臨床で見つけた疑問を科学的に解明する臨床研究の方針の立て方や研究グループの構成など、九州大学第一内科のスタイルと共通する部分があります。
実際に二つの大学間で医師同士のつながりもありますので、風土も親しみやすい。とてもいい環境だと感じています。
地域の特性や患者さんの年齢層など、医療を取り巻く環境は福岡県と愛媛県では大きく異なります。
愛媛県では松山市内に医師が偏在しており、東予・南予地域は医師が不足しています。そのすべての地域に医局員を派遣することは難しく、まだ十分な医療体制が整っているとは言えない現状です。
課題の解消には多少の時間を要するかもしれませんが、愛媛県の医療を支える人材を育てること、県内の医療機関に人的資源を着実に行き渡らせていくことは、私たちが向き合うべき重要なテーマです。
―患者の傾向は。
特定の臓器に限局しない疾患を対象とするため高レベルな全身管理とケアが求められます。臨床では、常にガイドラインに沿った最新の治療を提供。今後は臨床研究にも注力し、新薬による有効な治療法など有益な情報を愛媛大学から発信したいと思います。
当科を受診する方の多くは長引く発熱、原因不明の倦怠感など、診断がついていない紹介患者さんです。そうした患者さんに対して血液検査や骨髄検査を実施し、これまで培った知識と経験、エビデンスに基づき鑑別診断をします。
この「どう診断の確定に迫っていくか」という一連の流れが当科の最大の魅力だと考えています。
私が専門とする血液領域において、難治性疾患治療の切り札は「造血幹細胞移植」です。以前は、ヒト白血球抗原(HLA)という「型」が完全に一致しなければ移植できないとされてきました。現在はHLAの一部が不適合であっても移植が可能です。
しかし、適合の割合が低いほど、再発や、ウイルス感染症などを移植後に合併するリスクが高い。それらを原因とする治療関連死も少なくありません。
日本造血細胞移植学会でウイルス感染症対策のガイドライン策定に携わった経験を生かして、移植前の抗がん剤使用に工夫を凝らすなど、安全面の改善に努めています。
―どのような人材の育成を目指していますか。
新型インフルエンザやヒト免疫不全ウイルス(HIV)、院内感染症の対策も当医局の重要な任務です。他施設と共同で進めているダニ媒介性感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の臨床研究は前教授の安川正貴先生が主導しています。
SFTSなどの感染症は専門的な治療を要し、さらに対応には十分な人数が必要です。院内感染症はどの病院においても起こりうるもの。感染症専門医による高度な医療機能は一定の集約化を図りつつ、県内の連携体制を構築して、感染症対策を推進していきたいと考えています。
当教室の診療領域は「血液」「感染症」「膠原(こうげん)病・リウマチ」。どの領域を専門として選んでも「感染症」に精通しておくことが重要です。この領域の第一線で活躍できる人材を輩出していきたいと思っています。
愛媛大学大学院医学系研究科血液・免疫・感染症内科学
愛媛県東温市志津川
TEL:089-964-5111(代表)
https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/int.med1/