スピード感を大事に変革期に立ち向かう
時代に合わせた改革を行い、成長してきた社会医療法人近森会。事務職として20年にわたって経営を支えてきた寺田文彦管理部長は「現場を知ることとスピード感が大切」だと語る。
―管理部長として大事にしていることは。
当法人の近森病院では毎朝、病院長、診療支援部長、総務部長といったメンバーで1時間強のミーティングを行っています。
1カ月ごとに患者数、病床稼働率などさまざまな数字がまとまります。でも、それが出てから対策などに動きだすようでは遅い。夜間の日誌や毎日の稼働状況を常にチェックしていて、何か変化があればすぐに現場へ出向いて話を聞き、必要があればその都度調整・対処しています。
やはり直接現場へ行くことによって気付くことは多いですね。医療職の人たちは目の前に患者さんがいますから、わざわざ管理棟に足を運んで、話をしにくることはほぼありません。でも現場に行けば、やはり何かしらの話が出てくるのです。それを拾い上げるのがわれわれ幹部の役目だと考えています。
病院内には、カンファレンス室を数多く設けています。何か問題が起きた場合、現場レベルですぐに話し合いをし、対処法を考える。そして即実行し、解決していくためです。
問題が起こって、書類で上層部に報告が上がり、数週間後に会議を段取りして、対処法が決まるのが数カ月後...。そんな状況では円滑な病院運営はできません。スピードは病院の運営、そして成長のための大切な要素の一つで、その意識が浸透しているのが、当グループの強みだと思います。
―管理部の役割とは。
診療支援部と総務部に分かれています。全員が病院のあらゆる職種をしっかりと支えることを目指し、特に診療支援部は現場に足を運んでサポートする意識を大切にしています。
例えば書類ひとつであっても、その書類を出してきた部署の人、モノ、環境を知らないと迅速で正確な対応はできないのです。
現場には、診療行為以外にも煩雑な業務があります。伝達や他部署との調整などもある。それを行うのも管理部の仕事です。医師や看護師などの専門職には、より専門性が発揮できる環境で仕事をしてもらいたい。われわれはそのための環境づくりをする部署です。
同時に、さまざまな部門に横断的に関わることで病院全体を見渡すことが可能です。現場では気付かないボトルネックを見つけ出して分析・改善提案をするというのも、管理部の重要な役割となっています。
―病院経営の今後は。
高齢化が特に進んでいると言われる高知県ですが、それは高齢者人口が今後増え続ける、ということではありません。総務省が発表した将来推計人口データでは、この先25年、高知県の総人口は減少、そして高齢者の人口も減少していくとの予測が出ています。それはつまり、患者数も減るということです。
さらに、診療報酬の改定によって、報酬単価も下がっています。地域医療構想の2025年時点での必要病床数を見ると、2015年と比較して県全体で4000床近くが過剰になるとの推計も出ています。
各医療機関、そして高知県というレベルで、今後の在り方について検討し、見直す時期にきたのだと思います。
今年始まった新専門医制度による医師の都市部への偏在傾向の強まり、医師の「働き方改革」なども、これからの病院経営に影響をおよぼすことは想像に難くありません。こうしたさまざまな要因が今後は不連続に、複合的に絡み合っていきます。
まさに今、医療界は変革期。常にその動向を注視しながら、どの方向に進むべきなのかを考えていきたいと思います。
社会医療法人近森会 近森病院
高知市大川筋1-1-16
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