全国、海外から医師が学びにくるセンター
2年後に移転を控える宮崎市郡医師会病院。心臓病センターもさらに高度化する。進化を続け、地域医療を強化しながら循環器専門医の育成にも力を注ぐ柴田剛徳センター長に語ってもらった。
―心臓病センターの概要を教えてください。
20年ほど前まで、宮崎の重症心臓病患者は県外に搬送されていました。心筋梗塞や狭心症など、高齢化に伴い需要は増える一方にもかかわらず、遠方の病院に頼るしかなかった。その急性期の循環器診療を宮崎で完結したいという思いで1997年に開設されたのが、このセンターです。
私は、当時の宮崎市郡医師会会長であった綾部隆夫先生によって、当センターの開設メンバーとして集められた専門スタッフの一人です。
地元医師会の全面的なバックアップにより、当時の最新機器がそろえられました。人材を増やして、設備の充実も図り、今では、3次救急を担う高度急性期病院として患者さんを24時間体制で受け入れられるようになりました。
センター開設以来20年間で2万件を超えるカテーテル手術を実施。TAVIと呼ばれる経カテーテル大動脈弁置換術を得意としています。
2007年からは、「インターベンションワークショップ」と称し、当センターの医療技術を共有するための医師向けワークショップを年間20回程度実施。6人の定員が毎回満員となる状況です。
そのうち年3回は海外からの医師の参加も受け入れています。その際は、施設見学、手技のレクチャーなど、すべて英語で行っています。
ワークショップに参加した医師からは、メールでの質問も受け付けます。学んだ内容を実践・応用してみたけれど、うまくいかなかった、といった場合に対応策を助言するなど丁寧にフォローしています。
―2年後に迫る病院移転に向けて。
当院は海岸近くにあり、南海トラフ地震が発生した場合には、津波による被害が予想されています。そこで内陸部に移転する計画が進行中。2020年には新病院での診療を開始する予定です。
東九州自動車道の宮崎西インターにほど近い場所に移るため、高速道路を利用しやすくなり、これまで以上にモービルCC(心臓病専用救急車)の活用が見込まれます。ヘリポートも新設する予定ですので、カバーできるエリアもさらに広がります。
また、心臓血管造影室は5室に増え、高度技術を備えたハイブリット室も併設します。設備が拡張することで、緊急対応だけでなく、通常診療でもより多くの患者さんを診察できます。
―スタッフ教育で大切にしていることは。
当センターには、循環器を専門とする内科医が21人、心臓血管外科医が4人います。彼らは北海道から沖縄まさまざまな地域から高い志を持って当院を選び、学びながら経験を重ねています。
現在、当センターにいるドクターを丁寧に指導することで、次世代の医師を育成する「リーダー」に育っていってくれるでしょう。一人でも多くの患者を救うために、より多くの優秀な循環器専門医を育て、全国に返して、全国各地の地域医療の充実を図りたいと考えています。
看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、理学療法士、薬剤師、栄養士などにも高い技術と知識を求めています。また、カンファレンスでのコミュニケーションと情報共有にも力を入れています。
患者さんは一人ひとり、治療の選択肢が異なります。チームで最善の治療法を選び、慎重に経過をケアする。そのためには、すべての職種がしっかりと考えを持ち、発言することが求められるのです。
宮崎市郡医師会病院心臓病センター
宮崎市新別府町船戸738-1
TEL:0985-24-9119(代表)
http://www.cure.or.jp/cardiovascularcenter/