役割分担で効率化を図る 診療の3本柱確立を
四つの基幹病院がある佐世保市。佐世保市総合医療センター、佐世保中央病院、長崎労災病院、そして佐世保共済病院だ。市内だけでなく、松浦市や平戸市を含む県北医療圏を支えている。病院間で、どのように役割分担しているのか。井口東郎院長に語ってもらった。
―市内に四つの基幹病院がある中で、佐世保共済病院の役割を教えてください。
当院が担う診療の一つ目は「がん」です。特徴は、外科医ではなく腫瘍内科医ががんの診療を担っていることで、佐世保県北医療圏で腫瘍内科を標榜しているのは当院だけです。患者さんやその家族との面談に時間をかけ、患者さんに寄り添った治療を他職種との共同(チーム医療)で実践しています。県内でも腫瘍内科を標榜した病院はほとんどありませんので、腫瘍内科医が担うがんの治療を診療の柱の一つにしたいと思っています。
二つ目は「骨折」です。整形外科での骨折治療は、長崎労災病院が西日本でトップクラス。大勢の患者さんが集まります。しかし全員を受け入れられるわけではありません。そこを補完するのが当院の役目です。
長崎労災病院が難易度の高い骨折の治療をする。当院は一般的な骨折の患者さんを担当します。あらゆる骨折を診ることができるのは当院の強みです。
三つ目は「周産期」医療です。基幹病院のうち、産婦人科があるのは佐世保市総合医療センターと当院だけ。高度な医療技術が必要な異常分娩や疾患は佐世保市総合医療センターが診療し、それ以外の患者さんを当院が診ています。
佐世保県北医療圏のうち、松浦や平戸には産婦人科がありません。そのため正常分娩も担当していかなければならない。医師や助産師の確保を急いでいます。
私の院長の任期はあと2年半です。それまでに「がん」「骨折」「周産期」の診療の3本柱を確立させたいと思っています。
―課題は。
やはり医師不足です。九州では福岡県に一極集中していて、偏在は大きな問題です。そこで、医師を派遣してくれる大学や他の病院との関係づくりを大切にしています。研究会や学会に参加するのはひとつの手段です。さらにその後の懇親会も重要。親睦を深められる最適な手段だと思っています。
医師確保のために、若い人をフォローできるシステムの構築が重要だと考えています。つまり、若い医師が来てくれるような魅力づくりが必要なのです。
そのために、論文への取り組みや、学会への参加で、病院のレベルアップを図っています。今は、医師不足で臨床に忙しく、そういった活動に積極的に参加する人が少なくなりました。しかし若い人が働きたい病院にするためには必須です。若い医師がいるだけで病院の雰囲気が明るくなる。若い医師にとっても病院にとっても、喜ばしいことだと思います。
―地域包括ケアについては。
2年前に36床の地域包括ケア病棟をつくり、最近4床増やしました。最初は他の病院からの緊急搬送入院用にしようとしていたのですが、実際は40床あるうち、当院の整形外科からの患者さんが9割。外からの患者さんを受け入れたいのですが、今のところは少ないですね。
支えとなっているのが入退院の調整をするソーシャルワーカーの存在です。独居高齢者が増えました。老老介護の問題もあります。病院である程度症状が回復しても、家に戻ってから誰が面倒を見るのか。この問題にソーシャルワーカーが取り組んでいます。
今後は介護施設との連携をより深めていきます。今年6月には介護施設との懇談会を開催し、200人弱が集まりました。今後、懇談会は年に1度開く予定です。2年前から開いている地域の医療機関との懇談会も良い関係づくりに役立っています。やはり大切なのは、直接会って顔の見える関係になること。そのつながりこそが地域医療の宝なのです。
国家公務員共済組合連合会佐世保共済病院
長崎県佐世保市島地町10-17
TEL:0956-22-5136(代表)
http://kkr.sasebo.nagasaki.jp/