加速する「遠隔診療」

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ICT普及で迫られる変化とは

 「遠隔診療」の本格的な普及につながるかー。医療現場に広がるICTは課題解決や業務効率化の一手として期待されるとともに、医療者に「新しい変化」を迫る。

◎急成長するICT市場

 今春の診療報酬改定で「オンライン診療料」が新設されたこともあり、情報通信機器を用いた診療、受診勧奨、健康医療相談といった「遠隔診療」の導入拡大が進んでいる。

 世界のICT市場を見ても、IoTデバイスの数が急激に伸びている。通信やコンシューマー、自動車産業などを合わせて、2018年は約310億個、2020年には400億個を超えるという(予測値)。

 スマートフォンやウエアラブル端末を活用したデジタルヘルスケア市場の躍進も目覚ましい「医療」は、IoTデバイス市場において今後の高成長が期待できる分野の一つ。遠隔医療の国内の市場規模は、2019年には200億円近くに上るとも言われている。

 医師の地域偏在や不足をはじめ、労働環境の改善、在宅医療への対応、医療費の削減ー。ICTの導入促進は、医療機関が直面するさまざまな課題の解決につながると期待される。

 「医師の働き方改革に関する検討会」の「中間的な論点整理」(2018年2月)では、改革のポイントとして「ICTを用いた勤務環境改善について効果を検証するべき」と提言している。

 また「医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会」第3次中間とりまとめ(同5月)によるとICT、IоT、タスクシフティング(業務移管)などがもたらす効率化によって、2040年までに「7%の業務削減」(労働時間を週55時間に制限する場合)が見込めるという。

◎なぜ普及が遅れた?

 過去、遠隔診療は思うように普及してこなかった経緯がある。もともと医師法第20条(1948年)において、医師は自ら診察せずに治療や診断書を交付することなどが禁じられた。

 情報通信機器を用いた診療が「解禁」となったのは1997年のことだ。

 「厚生省健康政策局長通知」で遠隔診療は「あくまで直接の対面診療の補完である」が「直接の対面診療に代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合」はただちに医師法に抵触しないとされた。

 遠隔診療の対象として「離島やへき地の患者」が例示されたことが「遠隔診療の対象は離島やへき地の患者に限る」という解釈を生むことになった。

 2014年時点での遠隔医療システムの導入状況は8500病院のうち、遠隔画像診断1335、遠隔病理診断226、遠隔在宅医療18(厚労省「施設医療調査」)。患者の病理画像などを送り、診療上の支援を受ける「医師間」の遠隔医療を中心としてきた。

 こうした状況を受けて2015年、厚労省は「対象は1997年の例示に限定されない」と明確化。遠隔診療の適切な実施・普及に向けた議論を経て、2018年、遠隔診療を実施する際の判断の参考となる「原則の明示」「診療形態の例示」を整理したルールがまとめられた。

◎医師に必要なスキルは

 オンライン診療は「遠隔診療のうち、医師ー患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」と定義されている。

 もちろん算定には一定の要件を満たす必要がある。「対象となる管理料等を初めて算定してから6カ月間は毎月同一の医師により対面診療を行う」「緊急時はおおむね30分以内に対面による診察が可能な体制を有している」などだ。

 また、オンライン診療料は「生活習慣病管理料」「難病外来指導管理料」「小児療養指導料」などを算定している患者に限られる。保険適用前と比較してルールが明確に定められたぶん、ハードルが上がったと言える側面もある。

 ICTの活用に積極的なある医師会の理事は「本格的な仕組みづくりはこれからだろう」と言う。遠隔診療への評価は、実情に合わせて変わっていくことが予測される。

 生活習慣病患者への効果的な指導・管理、血圧や血糖の遠隔モニタリングを活用した早期の重症化予防など、国はより効果的・効率的な医療の提供に資するものについては、2020年度以降の診療報酬改定でも反映していく意向だ。

 これからの医師には遠隔診療を実施できる範囲や必要となる情報通信機器、情報セキュリティーに関する知識が求められる。

 伝達できる情報量が制限されるため患者側の協力も重要度が増す。柔軟な発想でSNSや電子メールといったツールを組み合わせて活用することができ、「対面」と「遠隔診療」のバランスを踏まえた新たなコミュニケーションスキルを備えた人材が必要だ。

 厚労省は2014年度から「遠隔医療従事者研修事業」をスタート。制度や技術に関する講義、実習などを通して広範な知識、実践的手法を習得した医療従事者の育成も進めている。

 ICTを軸にした投資や育成を考えていくことが、今後の医療機関の活路を開くカギとなりそうだ。

オンライン診療料とは

[主な算定要件・施設基準]

●ビデオ通話など「リアルタイムでのコミュニケーション」でオンラインによる診察を行った場合。ただし連続する3カ月は算定不可

●対象となる管理料等の最初の算定月から6カ月間、毎月同一の医師が対面診療を行っている場合。最初の算定月から6カ月以上経過している場合は「直近12カ月以内に6回以上」同一医師と対面診療を行っていればよい

●緊急時に「おおむね30分以内」に対面による診察が可能な体制の整備

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