"面倒見のいい病院"を目指して
呼吸器疾患(結核等)や神経筋難病(重症心身障害、筋ジストロフィーを含む)、てんかん、機能脳神経外科、高次脳機能障害の奈良県の拠点病院として発展を遂げている奈良医療センター。「機能神経外科」をけん引してきた平林秀裕医師が、今年、特命副院長から院長に就任した。
―センターの特色を教えてください。
もとは国立奈良療養所でした。国の政策医療を引き継いでいるため、総ベッド数340床のうち、結核病床に30床、重症心身障害病床に100床を充てています。
当センターの特色は大きく分けて4点。まず呼吸器疾患診療です。県内唯一の結核治療機関としてだけでなく、慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)や睡眠時無呼吸症候群にも力を入れています。
二つ目は重症心身障害の患者の受け入れ。奈良県内で4カ所ある入院施設の一つです。
三つ目はてんかんの診療。当センターでは、ビデオ脳波モニタリングを導入しています。患者さんの様子を個室内に設置したビデオで24時間連続で撮影。同時に脳波を測定し、てんかん発作の起源を明らかにする診断方法です。精密な診断に基づき外科的治療も積極的に行っています。奈良県立医科大学とともに、てんかん診療の体制整備を進めているところです。
四つ目の神経難病(パーキンソン病、ジストニア、筋ジストロフィー等)に対しては、薬物療法、理学療法のみならず外科的治療を導入し、成果を上げています。
私の専門である機能的脳神経外科では、パーキンソン病の患者さんの脳に電極を埋め込み電気刺激を与える脳深部刺激療法を実施。手術症例数は関西の病院でもトップクラスです。
脳梗塞の後遺症で発症する痙縮(けいしゅく)では、カテーテルを使って脊髄周辺に薬液を入れていく「ITB療法」が効果を上げています。薬の量の増減で、痙縮をコントロールすることができます。
今年4月には新たな医師を招き、脳や筋肉を電気で刺激して障害を診断・治療する「電気生理外来」を開設しました。パーキンソン病治療で社会復帰を可能とするまでの新しい診療プログラムの作成に入っています。無意識に震えや痙攣(けいれん)が出る不随意運動疾患の治療に、一層力を入れていきたいと思っています。
―病院運営面、経営面の方針は。
病院運営では、医師や看護師、理学療法士などの医療スタッフと事務スタッフとの連携を重視しています。問題が発生した時に情報を共有し速やかに動けるような環境整備を続けています。
経営面では、近隣病院との機能分担と連携を強化し障害福祉サービス事業の提供体制を充実させ、安定した病院運営を維持するのが基本方針です。
5年前にさくら病棟という新病棟がオープン。一方、結核病棟は老巧化が進んでいます。今年度は黒字化を果たし、2〜3年後には建て替えに入りたいと考えています。
診療については認知症の本格的な治療を開始する予定です。日本脳神経外科学会でも、認知症や精神疾患に外科的治療を活用するという議論が出ています。高次の神経難病で培った機能神経外科のノウハウを認知症に応用することが今後のテーマ。精神疾患を加えた「総合神経診療センター」をつくるのが、将来の目標です。
当センターのモットーは「面倒見のいい病院」。病気を治療するだけでなく、患者さんが社会復帰できるところまでお手伝いをすることがわれわれの使命です。四つの特色をこれからも強化し、名実ともに面倒見のいい病院として評価いただけるよう、日々、努力しているところです。
独立行政法人国立病院機構 奈良医療センター
奈良市七条2-789
TEL:0742-45-4591(代表)
http://www.nho-nara.jp/