病の背景に思いをめぐらせ暮らしを支える医療を
独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)が発足した翌年の2015年、横浜中央病院の病院長に就いた。「重責を感じましたが、挑戦したいという思いがまさった」と振り返る藤田宜是病院長。就任4年目を迎えた今の思いを尋ねた。
―現状はいかがですか。
JCHOの目的は地域医療、地域包括ケアシステム構築の要となること。グループの57病院が各地で「旗振り役」となることが求められています。
厚生労働省が推し進める医療・福祉・介護の連携を支え、地域の方が超高齢社会の中で安心して暮らしていけるシステムづくりに貢献したいとの思いで病院長に就きました。
当院は1948年の開設以来、長年にわたって急性期医療を担う病院として運営してきました。JCHOへの移行に伴い、新たな方針のもと、地域医療により目を向けていくことになったわけです。
患者さんが退院した後のことに、病院としてどう関与していくか。現状として救急で受け入れた高齢の患者さんが当院での治療を終え、すぐに家で以前と同じ生活を送れる例はあまり多くはありません。
特に一人暮らしの高齢者は、買い物に出かけたり、通院したりといった暮らしのさまざまな面で不安を抱えている方が少なくないのです。
―どのような取り組みを。
そうした課題に対して、当院では横浜市中区医師会の開業医の先生方との「顔の見える関係」をつくり上げることで、解決を目指してきました。当院で治療した患者さんの症状が悪化した際には、責任を持って治療を支援する。早期からこうした取り組みに注力し、地域での信頼関係の構築に努めてきました。
当院が実施している「登録医制度」に参加している医療機関は、現在およそ240。患者さんが当院を退院する際には開業医の先生に当院にお越しいただき、スムーズな受け入れのための情報共有を図っています。一部では電子カルテによる情報共有も稼働しています。
また、横浜市中区医師会とは、当院のベッドの空き状況をリアルタイムで共有しています。登録医の先生方も、オンライン上で随時、状況を確認することができます。
レスパイト入院など、患者さんのさまざまな事情による入院への要望にも応えるべく、体制を充実させていきたいと思います。
先日は「自宅の玄関に段差があるため外出が難しくなった」という患者さんがいました。段差を解消する工事を行う数日間を、当院で過ごしていただきました。
JR根岸線石川町駅から徒歩3分、関内駅から徒歩8分というアクセスの良さは看護師をはじめ、職員の確保につながっています。
横浜中華街が近いことから、多言語に対応していることも当院の特徴。5人の医療通訳者が在籍し、中国語、英語、韓国語での診療が可能です。2020年開催の東京オリンピックでは多くの外国人観光客がやってくるでしょう。当院の強みが生かせるのではないかと思います。
課題といえば築60年ほどが経つ建物の老朽化が進んでいることです。多くの医療機関がアメニティーに力を入れる中、当院としても建て替えを含めて、時代に即した医療サービスの提供を目指したいと思います。
―あらためて地域医療への思いは。
私たちの役割は、決して患者さんの病気を治療して終わりではありません。患者さんの生活全般をとらえ、何か困っていることがあれば、助けになれることはないかと考えることを大切にしています。
2015年に開設した地域包括ケア病床では入院当日から円滑な社会復帰を目指し、ソーシャルワーカーが患者さんに関わります。医師の力だけでなく、院内外の多職種の専門性を結集させていきたいと思います。
独立行政法人地域医療機能推進機構 横浜中央病院
横浜市中区山下町268
TEL:045-641-1921(代表)
https://yokohama.jcho.go.jp/