積極的に先端医療を導入 2020年に新病棟計画
民間病院として国内で初めての陽子線治療施設オープン(2008年、南東北がん陽子線治療センター・福島県)など、先端医療の導入を積極的に進めてきた南東北グループ。2012年、川崎市に開設した新百合ケ丘総合病院でも、さらなる機能強化に向けた取り組みが着々と進んでいる。
―病院の特徴は。
政令指定都市である川崎市の人口は昨年150万人を突破し、なお増加傾向にあります。しかし、市の発展に対して、北部地域の医療機関の数は十分とは言えません。当院が位置する麻生区でも、以前は小児科の入院施設や分娩施設がありませんでした。2007年、川崎市は医療資源の不足を解消するために病院を公募。私たち南東北グループが選定されました。
開院に向けた準備が進んでいた2011年3月、東日本大震災が発生しました。2012年に開院後もしばらくは医師確保の面などで影響を受けましたが、現在は約130人と、十分な医師をそろえることができました。
フルオープンにこぎ着けるまでに約2年かかりましたが、現在、外来患者数は1日当たり約1000人。昨年度の救急車搬送件数は約7200台に達しました。
開院の大きな目的である救急と小児医療、産科医療の機能は、この地域で当院が中心となって果たしていくべき責務です。産婦人科には17人の医師が勤務。年間450件ほどの分娩や2000件近くの手術に対応。北部地域の小児科の入院施設としてさらに充実させていく必要があります。
―「先端医療」がグループのキーワード。
放射線治療をはじめ、南東北グループが力を注ぐ先端医療の導入は、当院でも積極的に取り組んでいるところです。
開院時に川崎市で初めてのPET-CTを導入したほか、サイバーナイフや手術支援ロボット「ダビンチ」など、高度先端医療を地域に届けるための環境整備を進めてきました。がんや心臓疾患、脳血管疾患を中心にした機能強化が当院の基本方針です。
今年に入り、月に2回ほど「粒子線専門外来」も開設しています。日常生活とがん治療を両立したいと望む患者さんのニーズに応えるために、当院としても多様な選択肢を提供したいと考えています。
―今後も大きな動きが計画されています。
2020年4月オープンを目標に新病棟を建設します。病床数の不足が続く北部地域の状況を改善するために、市の医療計画に応えるかたちで増床が決定。現状の377床に新病棟の186床が加わり、563床の病院として運営します。
新病棟は回復期リハビリ病床100床、緩和ケア病床21床、一般急性期病床65床で、救急センターや手術室の拡充も計画しています。北部地域で緩和ケア病床を持つ医療機関は当院が初めてです。
当院は多くの大学医局とのネットワークで医師の確保が成り立っており、各診療科の「人のつながり」を軸にして医師が集まっていることが特徴です。その人材も多様で、例えば大学教授の経験者が10人ほど在籍。診療の質の引き上げや教育面で大きく貢献していただいています。
幸いなことに医師が充足しているのは、やはり最新の医療環境を整えることで「働く場としての魅力」を高めてきたことが一つの理由だと思います。
グループの拠点である総合南東北病院では、現在、「BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)」の治療開始に向けた準備も進めています。複数の特色ある施設を有し、先端的な医療を学ぶ機会が得やすいのもグループの強みだと思います。
「先端医療」という具体的な目標を示すことで働く医療者の目標も定まり、モチベーションの源にもなるでしょう。それが患者さんの満足にもつながるはずです。
南東北グループ 医療法人社団三成会 新百合ケ丘総合病院
神奈川県川崎市麻生区古沢都古255
TEL:044-322-9991(代表)
http://www.shinyuri-hospital.com/