息づく歴史を誇りに "人に役立つ"新病院へ
大阪市西区に開院して87年。大阪西部地域の基幹病院として長らく親しまれてきた「日生病院」がこの春、「日本生命病院」として生まれ変わった。「使命である『済生利民』の精神を、未来へつなぐ新たな一歩」。笠山宗正院長はそう語る。
―「歴史と街をつなぐ新病院」がコンセプトです。
ここ江之子島地区は近代大阪の発展を支えてきた大阪府庁ゆかりの地。実はこの場所にはタワーマンションが建つ予定だったのが、業者が事業を断念したため当院が移転の名乗りを上げ、府議会で承認されたという経緯があります。
街づくりのコンセプトである「アート&ライフ」を引き継ぎ、アートと医療の融合を掲げて新築。住民が憩える回廊やイングリッシュガーデン、健康食にこだわったレストラン・カフェなど心地よい空間を提供しています。先日には街びらきイベントが開かれ、大勢でにぎわいました。
アートも医療も身体と心を癒やす点では同じ。ホスピタリティーを高めるために、院内にも数多くのアートを展示しています。
当院は、疾病や障害に苦しむ人々を救済するために1924年に設立された「日本生命済生会」の付属病院です。基本理念である「済生利民」、すなわち「生命と生活を救い、人の役に立つ」という使命はずっと変わりません。
児童養護施設で過ごす子どもや母子家庭のお母さんを対象とした無料健康診断、毎年の地域福祉に関する研究誌の刊行、子ども医療体験などの社会活動にも取り組んでいます。今回の移転でさらに住民の皆さんの安心・健康づくりに役立つ環境が整ったと思っています。
その取り組みの一環として開始するのが「江之子島健康サポートクラブ」です。会員登録すると、スマートフォンで受診受付ができ診察呼び出しの通知が届きます。ウェアラブル端末を用いた健康指導なども行います。利用者の声も取り入れながら拡充していければと思っています。
―強化した診療機能は。
腎臓内科、呼吸器外科、心臓血管外科、脳神経外科、形成再建外科、放射線治療科、リハビリテーション科、血液浄化センター、脳機能センターを新設。27診療科、7診療センターをそろえました。
手術室は7室、救急診療室は4倍の広さに。集中治療室は8室、内視鏡室も6室に増やしました。今後増加することが見込まれる透析患者の合併症や手術に対応できるよう、透析用のベッドも20床に増床。年間1万3000件ほど扱っている人間ドックは増加を見込み、予防医学センターも拡張しました。
医療機器の充実も図り、3.0テスラMRIを新規導入したほか、320列CTを2台備えました。血管造影装置は心臓専用アンギオ装置を導入。手術支援ロボット「ダビンチ」を用いた婦人科の手術も開始する予定です。PET-CTは将来はアルツハイマー病の早期診断に活用することも見込んでいます。認知症やロコモなど高齢社会を支える診療、健康寿命を延ばすための先制医療も推進します。
当院は従来から産婦人科診療が充実しているのも特長です。子宮・卵巣の良性腫瘍の内視鏡手術では全国でもトップクラス。周産期・女性医療をより充実させるため、ワンフロアは女性専用病棟としました。
最近3〜4年で医師の数も約90人から120人に増えました。人材や医療設備・機器の投資に見合う実績を上げ、健全な経営基盤を確立することも責務です。
当院を受診される患者さんの居住地は大阪市西部エリアを中心とする大阪市が75%程度で、その他は大阪市外や他府県からの患者さんです。広い地域の幅広い年齢層に対する医療を担っていることに責任と誇りを持ち、病院運営を進めたいと思っています。
公益財団法人日本生命済生会 日本生命病院
大阪市西区江之子島2-1-54
TEL:06-6443-3446(代表)
http://www.nissay-hp.or.jp/