人材の採用・育成と働きやすい環境の整備を
この春、就任した小林義典・東海大学医学部付属八王子病院長。循環器センター長、副院長を経てトップに就いた新リーダーが目指す未来は。
―着任からまもなく4カ月。抱負を聞かせてください。
当院は、経営の面ではかなり安定している病院です。これまでの病院長や事務方の方々が、収支の適正化のために、さまざまな努力をされてきました。
たとえば、人件費の適正化。無駄のない雇用で、必要なところに必要な人材を集中的に配置しています。
次いで病床の高回転・高稼動。そのために患者支援センターや入退院センター、総合相談室、医療連携室を設置し、地域の病診連携を密にしています。
設備面でも人材面でも先端医療をどんどん取り入れようという意識があり、それが功を奏して経営が安定していると思います。私の役割としては、これまでの取り組みを持続させていくことが大事だと思います。
就任にあたって強調したことの一つは人材の採用・育成。そして労働環境の改善です。
八王子病院は東海大学の4番目の付属病院です。今は医師が十分に確保できているけれど、将来的に厳しいかもしれない。ですから、病院としてもできるだけ多くの人材を集めたいと考えています。
初期研修医と専攻医がここで学びたいと思う病院をつくり、広報を活発化させてしっかりとアピールしなければならない。さらに、募集枠を広げる努力も続けていきたいと思います。
働き続けられる環境の整備に関しては、どこでも盛んにいわれている「働き方改革」に沿った改善を進めていく必要があるでしょう。
いろいろと難しい問題はありますが、まずは現状把握から、と考え、医師からのヒアリングを開始しました。当院では、医師個人が出勤簿に勤務した時間を記載し、提出してもらう仕組みですが、それだと実態が今一つ把握できない。時間外労働をしている医師本人に、どういう内容で長時間の勤務が必要になったのかなどを聞いています。
そのほか、遅滞のない入退院のための地域連携の構築や医療安全の強化、チーム医療の改善なども一層進めていきたいと考えています。耐性菌対策として、抗菌薬の適正使用チームも立ち上げる予定です。
―病院の特徴の一つで、専門でもある循環器内科については。
私がこの病院に来た2009年4月、循環器内科医は7人しかいませんでした。常勤が6人、非常勤が1人。冠動脈造影とカテーテルインターベンションが中心の診療科でした。
私は不整脈診療が専門なので、まずはその分野を充実させようと、カテーテルアブレーション、心臓植え込み型デバイス(ペースメーカー、植え込み型除細動器など)の症例数を上げることに努めました。
現在、循環器内科の柱はこの二つと包括的心臓リハビリテーション。アブレーションでは、左心房にある自律神経叢を焼灼する「GPアブレーション」、バルーンによって短時間で一括凝固させる「クライオアブレーション」を積極的に取り入れています。
包括的心臓リハビリテーションは、運動療法だけでなく、糖尿病や高脂血症といった生活習慣病のコントロールや精神的なサポートまで含みます。医師、看護師、薬剤師、理学療法士や栄養士、臨床心理士などが関わり、患者さんが治療を継続、再発なく過ごせるよう支えています。
循環器内科に限らず、この病院には、得意とする分野を持ち、日々先進的な検査や治療を実施している診療科がたくさんあります。病院長として、それぞれのスタッフの工夫や努力を後押しし、魅力ある病院をつくっていきたいと思っています。
東海大学医学部付属八王子病院
東京都八王子市石川町1838
TEL:042-639-1111(代表)
http://www.hachioji-hosp.tokai.ac.jp/