直接の"ヒアリング"がチーム力底上げのカギ
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院のトップに就いて13年目。「1割は脳神経外科教授としての臨床、9割は病院経営」の日々を送る。
―横浜市西部地区で求められる役割は。
横浜市の総合計画・基本計画である「よこはま21世紀プラン」で、市内6方面に高度医療機能を有する民間の地域中核病院が整備されることになり、その一つとして1987年に開院しました。
外科系の強みは消化管の鏡視下手術や硝子体、網膜病変治療、足関節の手術など。内科系でも、難治性の血液疾患や膠原(こうげん)病、呼吸器アレルギーの治療に特に力を入れおり、循環器内科の患者さんの数も右肩上がりで伸びています。
地域連携が密だというのが強みですね。開業医の先生方から患者さんを紹介してもらうだけでなく、当院から患者さんを逆紹介し、情報を共有しながら治療にあたることもしています。
当院の主な役割は、精密検査や入院治療が必要な急性期の患者さんの診療。でも、紹介状がない外来の患者さんも診ています。大学病院と地域の中核病院を融合させたのが当院です。患者さんの求めに応じて、信頼していただくことが重要だと考えています。
―病院長になって取り組んだことは。
トップダウンであったり、職種間の隔たりがあったりは患者さんにとって良い結果につながりません。「病院全体のチーム力の底上げ」。それが病院長の一番の役割だと考えています。
救急搬送への対応一つを挙げてみても、看護師やメディカルスタッフなどの存在や働きは大きい。しかし、従来は医師以外の職種と病院長が直接話をする機会は多くありませんでした。
そこで、毎週必ず、どこかのセクションの職員と一緒に食事の時間を設けるようにしました。ストレートな質問や意見をぶつけてくれる若い職員もいます。私自身もさまざまな部門のことを知ることができていますし、院内の風通しが良くなっている手応えも感じています。
今後は、同規模程度の病院間での連携をもっと強めたいですね。周囲の病院が何をやっているのかをお互いに知り、機能を分担することがこれからはますます重要になってくると思っています。
同じ医療機器を持ち、同じような診療をしていれば競争になってしまう。足を引っ張り合うのではなく、重複しないようにしながら自分たちの強みを生かせば、必要な場所に適切な人材を集中的に投入できるようにもなるはずです。当院の強みになる部分も、もっと増やしていきたいですね。
今、医師の偏在が問題になっています。それであれば、都市部でしっかりと医師を養成し、需要がある地域に送り出す体制や、若い医師が来たくなる環境をつくることが必要でしょう。
―病院長としてのモチベーションは。
私はずっと「病院長になりたい」と思っていました。病院を動かすには、トップになるしかない。ですから、打診を受けた時、「やります」と即答しました。
ほかの中核病院の病院長と会う機会もあります。みなさん、前向きです。「病院をもっと良くしたい」と考え、工夫しながら運営するのは、とてもおもしろいですよ。
今、さまざまな情報がパソコンや携帯端末から簡単に得られます。考えることを止めて、どこかに載っている答えを探すことばかり。そんな人が多いように感じます。
でも、医療や医学に限らず、世の中は、すでに答えが出ていることばかりではありません。若手医師、そして職員に言いたいことは、「勉強しよう、考えよう、楽をしようと考えるな」ということ。私自身も大事にしています。
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院
横浜市旭区矢指町1197-1
TEL:045-366-1111(代表)
http://marianna-yokohama.jp/