これまでもこれからも"地域医療を守る"を使命に
終戦間際の物資の少ない時代、開業医がほとんどいなかった地域に医療を、と設立された。地域住民の期待に応えたい―。今も、その思いは強い。
―病院の歩みを。
1945年8月1日に開院しました。困難も多い時代、JAの前身である神奈川県農業会が強い信念で病院を建てました。その先人たちの思いに、われわれも応え続けたいと思っています。「地域医療を守る」。それが、この病院のミッションであり、これからも変わらない役割です。
相模原二次医療圏は南北に長く、南の拠点は北里大学病院、北の地域中核病院は当院という意識で、これまで歩んできました。地域がん診療連携拠点病院、神奈川県災害拠点病院などの指定を受けているのも、地域中核病院としての責務を果たそうと考えた結果です。
がん診療については高精度放射線治療センター、外来化学療法センターを有し、緩和ケア病棟12床もあります。
救急にも力を入れています。救急車受け入れ台数は年間約6000台に上っています。
1日の平均外来患者数はおよそ1140人、平均入院患者数は360人余りです。ハード面から考えて、キャパシティーとしては限界に近づいています。そこで、病院移転構想が立てられ、すでに工事が始まっています。
相模原はリニアの開通によって大きく町が変わります。人口も増えるでしょう。移り変わるニーズに応え続けられる病院でありたいと考えています。
―「患者サービス」に力を注いでこられました。今後の方向性は。
安心、安全で質の高い医療を提供するという大前提を維持しつつ、院内で医療を提供するだけでなく、地域にもっと出ていく。それがこれから求められる患者サービスだと思っています。
これから充実させたいと考えているものの一つがおよそ10年前から開いている市民健康教育公開講座です。
これまでは、病院側がテーマを決め、医師がそれぞれの専門分野について市民にわかりやすく説明するという形でした。今年は、市民や患者さんが「本当に求めている」内容の公開講座へと転換を図っています。
公開講座への出席率が高い方にサポーターとなっていただき、病院側と意見交換の場を設置して、どんな公開講座を求めているのかといったことを直接お聞きし、取り入れていこうと考えています。
訪問診療も「地域に出ていく」医療です。といっても、われわれが直接地域に出ていくというイメージではありません。患者さんの自宅などを訪れている訪問看護ステーションの看護師や薬局の薬剤師、訪問診療をしているクリニックの先生方へのサポートと、スキルアップへの貢献で、後押ししたいと考えています。
必要があれば、当院の看護師が同行し、助言もします。人工肛門を装着している患者さんに対するケアの方法などをアドバイスし、専門技能を地域にも広げていければと考えています。
―人材育成も大切にしてきたと聞いています。
就任時から「教育」を前面に押し出してきました。看護師、医療技術部のスタッフなどに学会や研修会、講習会に参加するよう呼びかけ、費用などをサポートし、医師の学会参加も補助しています。
看護師は役職者になる前に、必ず決められた講習を受けるよう定めるなど、教育のシステムも整っています。もともと、モチベーションが高い職員が多くいたこと、さらに「学び続けよう」という意識の浸透によって、多くのスペシャリストが育っています。
病院をつくるのは、結局は「人」なのです。優れた医療人を育てることが、地域貢献につながっていくのだと思っています。
神奈川県厚生農業協同組合連合会相模原協同病院
神奈川県相模原市緑区橋本2-8-18
TEL:042-772-4291(代表)
http://www.sagamiharahp.com/