進む新病棟プロジェクト ハード、ソフト両面強化へ
現在、本館病棟の増改築工事が進む安岡病院。オープンは2019年の予定だ。工事に至る経緯から、新病棟の特徴、地域医療で果たしていく役割などを戸田健一院長に聞いた。
―プロジェクトの概要について教えてください。
今年の11月中旬に建物が完成し、一部が稼働を開始。フルオープンは2019年4月です。建て替えの目的の一つは災害への備え。1981年に建てられた旧病棟は老朽化が進むとともに耐震性の問題がありました。
また、団塊世代が75歳以上になる「2025年問題」への対応を見すえて数年前から病床の再編に取り組んでいます。今回の増改築によって、その計画が完了します。
全体で278の病床数は変わりませんが、地域のニーズが高い緩和ケア病棟、地域包括ケア病棟をそれぞれ25から36に、48から58に増床します。患者さんとそのご家族に、より良い医療環境を提供できるのではないかと考えています。
緩和ケア病棟は来年で開設20年を迎えます。これまで地域のがん医療の一翼を担ってきました。非常に高い専門性が求められる領域だということもあって専任の医師と7対1看護体制を整備。さまざまな症状の緩和はもちろん、ご家族も含めた「心のケア」も重視しています。
毎週金曜日、病棟デイルームで「お茶会」を開いています。ボランティアによる合唱や演奏、セラピー犬との触れ合いを通じて安らぎを感じてもらうなど、残された時間を穏やかに過ごしていただくことを心がけています。
新病棟は最上階の4階を緩和ケア病棟とします。大きく開かれた窓から、ベッドで横になりながら響灘を見渡せる。そんな眺望を楽しめる設計です。
―地域包括ケアに対する取り組みは。
2017年に開設した地域包括ケア病棟は新病棟の2階に入ります。地域の診療所の先生方や急性期病院から紹介された患者さんを受け入れ、在宅復帰を目指した治療とリハビリテーションに努めています。
「治療の第一歩は栄養から」という言葉もあるように、積極的に管理栄養士に病棟に入ってもらい、リハ栄養の視点から栄養管理計画を立案。NST(栄養サポートチーム)ラウンドで効果を検証しています。
地域包括ケア病棟では原則として入院から約30日での在宅復帰を目指しています。当院の母体である「松涛会グループ」は、下関市内で診療所、介護老人保健施設、特別養護老人ホームなど、医療・介護・福祉サービスを8拠点・58事業所で提供しています。
各施設・事業所が相互に連携を密にして運営しており、松涛会グループ内でいわゆる「地域包括ケアシステム」を構築していることが、当法人の強みの一つであると考えています。
今後は、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリの領域にも注力。医療から介護までの流れを、よりシームレスな仕組みとして整えたいと思います。
新病棟の建設と並行して病院のICT化を本格化させます。まずは電子カルテや業務管理システムを導入。限られた人員で質を落とさず、効率的な医療を提供できるシステム開発を進めています。
将来的には当松涛会グループ全体でシステムを一元化し、迅速で的確な医療、介護サービスの提供を実現したいですね。
また、患者さんとそのご家族への対応はもちろんですが、働きやすい職場環境づくりのためにも、コミュケーション能力の向上は不可欠です。強化に向けて今年、中堅職員を対象としたコミュニケーション研修を実施します。
新病棟の完成を機にハード、ソフト両面の充実を図ります。今まで以上に地域医療への貢献を果たしたいと思います。
医療法人社団松涛会 安岡病院
山口県下関市横野町3-16-35
TEL:083-258-3711(代表)
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