かかりつけ総合病院として地域での使命を果たす
「情熱的な職員が多い。それが当院の強みですね」と語る大森浩二院長。一致団結して目指すのは、地域における「かかりつけ総合病院」だ。
―病院の運営について。
今春、院長に就任する以前から病院運営に携わっていました。昨年は「保険診療委員会」を立ち上げ、月に1度、各診療科の代表が集まってレセプトの記載要領や加算算定に関する情報を共有。収益が上がるルールづくりを進めています。
今春の診療報酬の改定により、自宅からの入院や緊急の受け入れ、在宅医療の提供などのほかに、新たに看取(みと)りに関する指針の策定が地域包括ケア病棟の実績評価項目として加わりました。
訪問診療の場や急性期病棟で看取る機会も多く、「延命治療の有無や終末期の栄養管理をどこまで行うか」といった課題がこれまでも職員を悩ませていました。
そこで、看護部をはじめ院内で総力を挙げて看取りの指針を策定。地域包括ケア病棟入院基本料1の施設基準での運用に取り組んでいきます。
「総合外科」を掲げて幅広く診療している外科、高齢者の骨折が増えている整形外科をはじめ、外科系の診療科への需要は拡大しています。しかし、それらの周術期管理を担っている循環器内科では今春2人の医師が退職。常勤医は私1人になりました。
複雑な循環器疾患については高度急性期病院との連携が欠かせません。院長としての任務とともに、循環器内科を存続させるべく懸命に臨床にも従事しているのが現状です。
―強みは。
通常の業務を真剣にこなすのはもちろん、「どうすれば病院をもっと良くしていけるだろう」と一人ひとりが考えている。熱心な職員が多いのが強みです。
中堅の医師が中心となって発足した「業務改善委員会」は、これまでなかなか見直す機会がなかった清掃場所や薬の処方時間、退院ルールなど、多岐にわたる問題について効率性と収益性を考慮した意見を提示してくれます。集めた意見を取りまとめて、どう落としどころを見つけていくかが今後の課題です。
職員の努力の甲斐もあり昨年度はJCHOになっての4年間で初めて累積赤字がゼロ。年度末手当として職員に還元することができました。組織の改編などで中断していた病院の建て替え事業についても、道筋をつけて職員のモチベーション向上を図っていきたいと考えています。
ここ高松でも都市再生整備計画が進んでいます。市内を走る琴平電鉄に二つの新駅を作るのに合わせて道路を整備し、パーク・アンド・ライドを推進。鉄道駅の利用客を創出して、高松市民病院が移転する仏生山地区の活力向上と「多核連携型コンパクトシティ」の構築を目指しています。
当院も琴平電鉄「栗林公園駅」の目の前という立地を生かし、将来の病院建て替えの際は健康管理センターにフィットネスジムを併設。高齢者や鉄道を利用する仕事帰りの人が集まる場、さらには疾病予防につなげていけないかと構想しています。
―地域における在り方は。
以前、香川大学で地域医療教育支援センターのセンター長として人材の育成・研修に携わっていました。
地域医療については理解していたつもりでしたが、当院で医師不足や病院運営の実状を目の当たりにしました。知識と現実には大きな乖離(かいり)があり、より深刻な状況にあることに気付かされたのです。
しかし、建物は古くても「フィーリングが良い」と言って喜んで通院してくれる患者さんがいることを誇りに思っています。今後は「かかりつけ総合病院」として、当院や連携病院が一体となって患者さんをケアすることで、地域の人たちに寄り添っていきます。
独立行政法人地域医療機能推進機構 りつりん病院
香川県高松市栗林町3-5-9
TEL:087-862-3171(代表)
https://ritsurin.jcho.go.jp/