時間をかけても「再発予防」患者が困らない体制を
自然に囲まれ「ガーデンホスピタル」と呼ばれる福間病院。「職員はすべて治療者であれ」「緑豊かなこの大地を治療の道具に」を基本理念に、先駆的な精神医療に取り組んできた。精神疾患患者が大幅に増えている今、地域で求められている役割は。
―精神科スーパー救急病棟をお持ちですね。
当院の救急部門は、重症患者の割合が高いのが一つの特徴です。自傷他害の恐れのある人、精神運動興奮状態や妄想幻覚が強い人、自殺願望が強い状態の人...。そういった重症の人をしっかりと治療し、「可能な限り再発させない」ことを目指しています。
急性症状を抑えた後は、鎮静薬を極力使用しないのが方針の一つ。患者さんとしっかり話し合える環境をつくり、病気や薬、支援体制について説明。患者さんがどうしたいのかを一緒に考えます。さらには病気の悪化のパターンや兆候への対処法などを教育していくのです。
この病院は、国内で最も早い1975年に統合失調症に対する精神科デイケア施設の承認を受けるなど、再発予防に長年力を注いできました。救急でも「とにかく早く、今のこの状態を改善しよう」という考え方だけでなく、「再発させず、社会復帰を支えていく」ことを実現したいと思っています。
―地域の病院との連携は。
救急では特に、精神疾患と、外傷や身体疾患が併存する場合の対応が課題になっていました。精神科救急では、急を要する外傷やがんの治療ができない。しかし、一般救急を受診しても興奮や錯乱などの精神症状があるために対処や治療が難しい。「患者さんが困らない」体制をつくる必要がありました。
そこで、当院では、一般救急を担う地域の病院との連携会議を定期的に開催。情報交換を重ねています。地域救命救急センターである「福岡東医療センター」(古賀市)とは10年ほど、救急告示病院の宗像水光会総合病院(福津市)とは3〜4年。協力し合って精神疾患と身体疾患が合併する患者さんを受け入れています。
相互に理解が深まってきたと感じますね。救急だけでなく、当院に入院している患者さんにがんが見つかった時などの紹介もスムーズです。転院先に当院の医師や看護師が出向いて患者さんの状態を見たり、必要に応じて精神疾患の対応に関するアドバイスをしたりする仕組みも整っています。
院内でも身体合併症の管理を強化。内科医を増員し、皮膚科や整形外科の先生にも非常勤で来ていただき、入院患者の褥瘡(じょくそう)の治療や身体リハビリを担当していただいています。
―心療内科もありますね。
常勤精神科医は現在19人。心療内科医は3人います。精神科が「脳の病気」として精神的な症状が出ている患者さんを診て、心療内科は心と体の相関によって、体に症状が現れている患者さんを治療しています。
両科が刺激し合って、良い雰囲気が育まれています。議論し、お互いの視点を理解し、足りない部分を補い合っていく。精神科医は身体症状への関心が高まり、心療内科医は精神疾患症状が出たときの危機介入を身に着けています。患者さんを総合的に診ることができるようになっていますね。
院内全医師による症例検討会も実施しています。精神科、心療内科、さらには他科も含めて、それぞれの良さを生かしながら垣根なく診ることができれば、患者さんにとってはそれが一番良いのではないかと思っていますし、当院ではそれができていると思っています。
今年4月、児童・思春期精神科「母と子のメンタルヘルス外来」を立ち上げました。不登校や引きこもりなどの子どもだけでなく、ご家族、特にお母さんの心の健康も支えたい。マタニティーブルーや産後うつも対象です。今はまだ医師1人体制ですが、当院の重点項目の一つとして、徐々に充実させていこうと考えています。
医療法人恵愛会 福間病院
福岡県福津市花見が浜1-5-1
TEL:0940-42-0145(代表)
http://www.fukuma-hp.or.jp/