統合でがん医療を強化 市内での完結を目指す
名古屋市から電車で約30分。「郷土愛が強く地元を離れても戻ってくる人が多いと思う」とにこやかに話す早川文雄新院長も「岡崎っ子」の一人だ。2020年までに市の医療はいくつかの転換点を迎える。今の思いを尋ねた。
-来年4月に愛知県がんセンター愛知病院と統合。
西三河南部東医療圏の総合病院は当院のみ。岡崎市街地を中心に人口が密集しているエリアで見れば、北東の端に位置しています。南西部の方々にとっては距離的にやや遠く、安城市や西尾市の医療機関を利用した方が便利です。医療圏の3分の1程度の患者さんが域外に流出していると言われています。
岡崎市としても市内で医療を完結させようと、さまざまな取り組みを進めてきました。その一つが、愛知県がんセンター愛知病院の岡崎市への移管です。
もともと結核病院であった愛知病院は当院から車で数分の場所にあります。2005年に愛知県がんセンター中央病院(名古屋市)のグループに入りました。がん医療という点でいえば愛知県がん診療拠点病院である当院とも重なる部分が多いのですが、合併症や夜間の対応などに苦慮していたようです。
至近距離にある二つの病院が同じような医療に取り組む中で、今後どう共存していくのか。また、2020年4月、JR岡崎駅南側に藤田保健衛生大学の新病院が開院することで、岡崎市南西部にも急性期医療の拠点が生まれる。同大とは患者さんの流出を食い止めるための同志として協働しつつ、ある面では切磋琢磨する関係ともなるでしょう。
そこで岡崎市全体のがん医療の集約化、強化を目指し当院と愛知病院の統合という結論に至ったのが今年2月。愛知病院の機能を段階的に当院に移行します。
緩和医療など愛知病院が強みとする領域が充実し、24時間体制の急性期や合併症の対応は当院が得意とするところ。外来の拡張や新たな機器の導入なども計画しています。統合のメリットを最大限に生かし、数年後にはあらゆるがん医療に対応できる体制を整えます。
-院長の専門は小児神経。「岡崎市こども発達センターすくも」の所長でもあります。
岡崎市では肢体不自由児や重症心身障害児(者)の受け入れについては「第二青い鳥学園(現:愛知県三河青い鳥医療療育センター)」が担っています。しかし、社会的ニーズが高まっている「子どもの発達障害」をケアできる施設はありませんでした。豊田市や豊橋市のセンターを受診するにも、1〜2年待ちの状況が続いていたのです。
2017年4月、私も計画段階から関わった「すくも」がオープンしました。小学校に入学する前の子どもに特化して「特性が障害になる」ことを予防し、将来的には自立した成人になってもらうことを大きな目標としています。
「ちょっと変わっているから」と周囲になじめず不登校になり、社会からドロップアウトしてしまうケースが多いのです。年齢が高くなるほど支援は難しくなる。早期に子どもの特性に気づき、うつや不安障害といった二次障害を起こさないための育て方を実践することが大切です。
センターの開設はスタートラインです。学童期以降の継続的、長期的なケアなども見すえ、教育機関との連携も探っていきます。
-今後に向けて。
院長就任時に職員に伝えたスローガンの一つは「選ばれる病院になろう」。岡崎市も少子化、高齢化が進み、労働人口は減少していく。いつまでも市民の「地元志向」に頼ってはいられず、当院も地域唯一の総合病院という意識のままでいるわけにはいきません。公立病院である私たちは地域の要望に鈍感であってはならない。同時に「医療者が生きがいを感じられる病院」を目指すことも忘れてはならないと思います。
岡崎市民病院
愛知県岡崎市高隆寺町五所合3-1
TEL:0564-21-8111(代表)
http://www.okazakihospital.jp/