弁天町に来秋移転 拡大路線で飛躍を目指す
大阪大学医学部形成外科の初代教授を務め、アメリカ形成外科学会名誉会員の称号を日本人として初めて授与されたスペシャリスト。この春、見識と人脈を買われ、移転を控えた中核病院の院長に就任した。新たなステージにかける思いとは。
―現状や抱負などを。
各部門にヒアリングしながら病院の実情を把握している最中で、経営についてもいろいろと勉強中です。ここ何年か、当院は赤字経営。何とか解消したいところですが、一朝一夕には難しいでしょう。
ターニングポイントは、2019年9月の新築移転です。移転先は大阪メトロ中央線・JR環状線の弁天町駅前、駅直結です。弁天町駅は各私鉄の乗り入れ駅ともアクセス抜群。関西一円からほぼ1回の乗り換えだけで来ることが可能です。
市内の西端である現在の場所では医療従事者も足が遠のきがちなのか、現在は275床に対して常勤医が35人程度。これでは手が回らないため、一部病棟は閉鎖中です。この移転を、新たな病院に生まれ変わるチャンスだととらえています。
―病院運営の方向性は。
医師の数も診療科も増やし、拡大路線でいきます。
診療科新設にあたっては、就任後すぐから、大阪大学や兵庫医科大学の臨床系各教室の教授との面談を進めてきました。地域ごとに必要とされる医療は違いますし、近隣病院がどんな診療をしているかも重要です。
大学は多くの病院に人を送っていますので、各病院の得意分野や、逆に地域で手薄になっている分野などの情報もリサーチしながら、細かくニーズを整理しているところです。
とはいいつつ、どこも医師不足ですから、補充はなかなか難しい。周囲から知恵をお借りしつつ、模索している状態です。
現段階で開設を目指しているのは口腔外科。ほかにも乳腺外科、血管外科、呼吸器内科、糖尿病内科、神経内科あたりを希望しているのですが、実際は二つ程度になるかもしれません。
院内のスペース配分も課題の一つ。延床面積は今と同じですが、5階建てから14階建てに変更するので有効スペースが減ってしまう。新設の診療科を、どう配置していくかを考えています。電子カルテの導入など、業務効率化も進めます。
―どのような病院を目指しますか。
医療従事者が誇りに思える病院にすることが願いです。鍵は高い医療水準。患者さんに安心を提供できるのはもちろん、若い医師や看護師がしっかりスキルアップできる病院ですね。
移転計画は、スタッフの意識にもいい影響を与えています。モチベーションを上げるための体制づくりも、今後の準備にかかっているでしょう。
女性が働きやすい環境づくりも進めたい。近隣にある保育所とのタイアップを図っています。保育を委託する代わりに園児のけがや病気をこちらがフォローするなど、互いのニーズをすり合わせているところです。
病院の隣には、大阪市の交流会館も建ちます。子育て支援から老人福祉まで多様な施設が入りますので、いずれ連携していければと思います。双方にメリットがある関係をつくることができればいいですね。
移転は、港区はもちろん市内全域、あるいはより広範囲から患者さんに来てもらえる病院に生まれ変わる絶好の機会です。苦労もありますが、大きなやりがいを持って臨んでいます。
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