"対話"をスローガンに良質な医療を提供し続ける
1992年以降、四半世紀にわたって松江赤十字病院で医療に携わり、4月に院長に就いた。大居慎治院長は、「対話」をモットーに病院を運営している。
―「対話」を掲げた理由は何でしょう。
「対話」の基本は、他人の考えをよく聞くことです。一方的ではなく双方向の会話で、相手が何を考えているのかを冷静に聴き、そして、決して感情的にならずにこちらの想いを伝える。それが「対話」だと考えています。
コミュニケーションの重要性がよく言われますが、私はそれだけでは足りないと思っています。もう一つ進んだところまで到達したい。対話することで初めてお互いが理解し合えるのではないでしょうか。
今いる職員が職務を進める上でも対話は重要ですし、患者さん相手でも、対外的な話でも同様ですね。
当院は島根大学と鳥取大学の中間点にあります。両大学とも緊密に連携を取っていきたいと考えています。
―地域の基幹病院としての使命は。
地域医療構想がまとまり、医療提供体制の再構築が進んでいます。そんな中、私たちは高度急性期病院であり続ける使命があると思います。
そのために、日々の治療を大切にしながら、災害拠点病院としての機能も確固たるものにしたい。救急医の充実も図らなければなりません。
ハード面での整備はある程度進めることができたという実感があります。6年前の改築で免震構造になり、昨年には原発事故に備えた改修工事も完了しました。
今年度中に災害拠点病院として事業継続計画(BCP)を策定する予定です。今の時点でも各種の災害マニュアルなどはありますが、改めて大規模災害に対してのマニュアルを作成し直すとともに、これまでいくつものチームに分かれてバラバラに進めていたシステムなどを一つに結合させます。
計画の策定後はきちんと機能するのか検証すべく、訓練を重ねて細部を詰めていくつもりです。
―日ごろ、仕事の際に大切にしていることを。
「利他心」と「探求心」の二つの心が欠かせないと思っています。
まず、自分の都合ばかり考えて他人のことを考えない姿勢ではいけません。最初に他人の利益を考える。職員にもこの姿勢を大事にしてほしいと思います。
そして、科学的な思考で自らの専門分野を研究していく探求心。これは日々、忙しい生活を送っていると忘れがちです。しかし、医療に携わる者に必要な心構えだと私は考えています。
対話も、利他心があれば自ずと生まれるものでしょう。医学を探求するうえで自己と対話することも不可欠だと思います。
―2018年度の展望は。
「健全経営」が一つの課題です。BCPも、今年度中に必ず策定します。
そのほか、入退院支援センター(PFM)を立ち上げたいと考えています。予定入院の患者さんの病状や家族構成といった基本的な情報を事前に知っておくことで、病院側は患者さんが入院する前から退院の時期や退院先などを見据えた準備を進めることができます。
患者さんも退院後の生活まで見通しが立つため、メリットは大きいはずです。実現のため、看護師やリハビリスタッフ、社会福祉士など多職種を巻き込みながら、トータルに管理していく部署をつくりたいですね。
最終的な病院の使命は、良質な医療を提供するということです。難しい病気を治すという意味だけではなく、患者さん一人ひとりときちんと対話をしながら向き合う、という意味だと私は思っています。
松江赤十字病院
松江市母衣町200
TEL:0852-24-2111(代表)
http://www.matsue.jrc.or.jp/