専門性と多様性が疼痛学を発展させる
7月19日(木)〜21日(土)にグランドプリンスホテル新高輪国際館パミールで開催される、日本ペインクリニック学会第52回大会。会長を務めるのは井関雅子教授。女性医師の視点から学会にちりばめた新たな取り組みとは。
―学会の特長を。
1969年の第1回大会から数えて49年目を迎えた日本ペインクリニック学会。7月の第52回大会は、女性医師が会長を務める初めての大会です。
会場には、事前予約制の託児所や、子どもを同伴して聴講できる中継会場を設置。子育て世代の意見を反映した新たな試みです。ポスター会場や展示会場、一部のランチョンセミナーについても、子ども連れで参加できるようにしました。これまで学会への参加を諦めていた方にも、奮って参加してもらいたいですね。
幅広い医療者の想いが詰まった大会になることを願って、「あなたの想いが未来のペインクリニックを創る―専門性と多様性への挑戦―」というタイトルをつけました。
シンポジストにはベテランだけでなく、これまでに優れた論文を発表した若手や、女性も積極的に起用しています。
―工夫した点は。
例えば国内外の演者が共に登壇するシンポジウムも企画しています。参加者は広く国際的な視野をもって見聞きし、多くの新しい情報を持ち帰ってほしいと思います。幅広い痛みの治療の専門家と交流するきっかけにもなればうれしいです。
同一テーマで複数の演者がそれぞれの視点で発表する「ジョイント講演」をいくつか企画しています。「ジョイント教育講演2」では、周術期のオピオイドの使用について、基礎研究と臨床の側面から2人の演者が講演します。
「ジョイント基調講演2」では、在宅医療における疼痛治療に関して、山口県の離島と宮城県石巻市で在宅医療に取り組んでいる2人の医師が講演します。地域医療の向上を目指したそれぞれの活動などを発表していただきます。
ペインクリニックでは、個々の患者さんの痛みや環境に応じた治療法の選択が求められます。「オーダーメード」を目指す中で、運動療法に携わる作業療法士や理学療法士、カウンセリングを行う臨床心理士、看護師など、医師以外の多職種による発表も多数予定しています。
さまざまなアプローチで治療に取り組む他の職種の方から学ぶことは多く、自分の役割を客観的に眺める機会にもなるでしょう。この大会を通して、痛みに関する治療の多様性や専門性を認め合うことができれば良いですね。
また当日はハンズオンセミナーも実施します。半日は手技の訓練、もう半日は講演を聴講するなど、それぞれの目的に応じて、予定を組み立ててもらえばと思います。
―今後、どのような医局にしていきたいですか。
2017年8月現在、非常勤を含めて42人中24人を女性医師が占めています。女性の比率が高いことは当医局の特徴の一つと言えるでしょう。
ペインクリニックの診療では、バックグラウンドも含めて、患者さんの状況をしっかりと把握して治療につなげます。麻酔科的治療である神経ブロックが有用な患者さんには、積極的に導入して、安全・確実な手技を心がけています。
順天堂医院のペインクリニックの症例数は、全国でもトップクラスです。病因が明確でない患者さんの場合は、入院して臨床心理士によるカウンセリングや、「慢性疼痛班」を設置している理学療法科の理学療法士などによる運動療法を取り入れ、治療と痛みの原因を究明します。
治療法の多様性と専門性を兼ね備え、臨床と研究の両方を大事にできる医療人の育成と医局の発展に努めていきます。
順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座
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