先輩ママのひとことで気持ちが落ち着くのです
内科や透析、リハビリテーションの機能を併せ持つケアミックス病院。外科中心の診療から慢性期、回復期に軸足を移して6年目。末丸直子院長は「優しい医療者」が働く病院を目指している。
―病院について。
一つだけ自慢してもいいですか? とても「子だくさん」で、看護師の離職率が低いのは、梶川病院の特徴だと思います。
多くの看護師が出産後に戻ってきてくれます。父は生前、保育料の補助など職員のサポートに力を入れていました。安心して子どもを産んで、子育てできる環境が少しずつ出来上がってきたのかなと思います。
4人のお子さんがいる看護部長をはじめ、みんな次々と復帰しては、また産休に入っていくのです。「どんどん産んでくださいね」と言いつつ、人手が足りなくなりそうなときもあるのですが(笑)。
子育ての経験が、患者さんへの接し方にも生きる部分があると思います。高齢化が進み、認知症の患者さんなども増えてきた今、しばしば対応の難しさを感じるケースがあります。
そんなとき、肝っ玉母さんが発する「これくらい大丈夫よ!」というひとことは気持ちを落ち着けてくれます。若いスタッフは、頼もしい先輩たちの姿を見て「自分も将来、ここでこんなふうに働くのかな」とイメージできるでしょう。私自身も、2人目の子どもを妊娠・出産したときには当院の先輩ママにずいぶん助けられました。
―30代半ばで院長に就任。
祖父がこの場所で小児科として開業。父が1980年に「梶川病院」を開設し外科中心の病院として発展させました。手術の件数もかなり多かったようです。
2009年に父が亡くなって、2012年に院長の職に就きました。そのころには手術件数も減少傾向にありましたし、私の専門は消化器内科。かねてから回復期、慢性期にシフトしたほうがいいのかなと思っていました。
もともと父には「急性期から在宅まで支えたい」という思いがあり、当光仁会グループは1990年代の半ば以降、訪問看護ステーション、通所リハビリテーション、介護老人保健施設などを展開してきました。
父が土台をつくってくれていましたので、私はこの領域を軸にしていこうと決めました。病院の方針としてはっきりと打ち出すまでには迷いもありましたが、職員と共有してからは、イメージする形に少しずつ前進できていると感じます。
今回の診療報酬・介護報酬の同時改定が在宅や介護を強く推し進めるものになっていましたので、方向性は間違ってはいなかった気がしますね。ただ2025年を見すえた取り組みとしては、もっといろいろな動きが必要であることは間違いないと思います。
今年、いくつかの目標と予定があります。6月に5度目の病院機能評価を受審。良い結果を出したいと思います。そして、10月の開設を目指し、地域包括ケア病棟の準備を進めています。
ちょっと体調が悪くなったら入院して、回復したらまた自宅に戻る。基幹病院で手術を受けた患者さんのリハビリや、まだ自宅に帰る自信がないという方の受け入れも担っていきたい。
ハードルをできるだけ低くして、地域の患者さんや近隣のクリニックの先生方に気軽に使ってもらえる病院でありたいですね。
―大切にしていることは。
他者の立場になって、どこまで考えることができるか。私がずっと心がけていることでもあり、いつも職員に伝えていることでもあります。
良い医療者とは「優しい医療者」のことだと思います。祖父も、家では厳しい一面を見せることがあった父も、患者さんへの優しさを第一にしていました。痛みや不安を抱えた人を受けとめるためには、自分にも余裕が必要です。優しい医療を提供できる環境づくりに努めたいと思います。
医療法人社団光仁会 梶川病院
広島市西区天満町8-7
TEL:082-231-1131(代表)
http://kajikawa.or.jp/