患者さんを笑顔にする診療
「電子カルテばかり見ているなんてもったいない。患者さんの顔を見て話を聞き、とことん説明します」と語る佐村博史院長。時間と手間をかけ、患者満足度の高い診療を展開する「さむら脳神経クリニック」の取り組みを聞いた。
―クリニックの概要を。
当院は、沖縄本島中南部の宜野湾市で2010年2月に開院。クリニック名には、琉球大学脳神経外科学教室の初代教授である六川二郎先生の名前を入れています。
六川先生は、県内の多数の病院で脳神経外科開設に尽力するなど、沖縄県における脳神経外科治療の基礎を築いた方です。先生の教授時代、私はほぼ1年おきに医局の関連病院を回り、研さんを積んでいました。異動先が決まるたびに教授室に呼ばれ、「新しい病院で君のファンを作ってくるんだよ」と背中を押してもらったことが非常に懐かしいですね。
当院では主に頭痛や認知症、脳卒中の内服治療の診療をしています。重症、または手術の必要な方にはその分野を得意とする医療機関を紹介しますが、県内の脳神経外科医はみんな顔の知れた関係なので、病診連携はもちろん、地域の内科医との診診連携もうまくいっています。
患者さんは本島に限らず、離島を含め、沖縄県全域から来院されます。
―診療の際、心がけていることは。
診察で検査結果を提示され「異常はないから大丈夫」とだけ言われても、きちんと納得や理解をしている患者さんは少ないと思います。MRIで撮影する、投薬することだけが治療ではありません。患者さんが納得し、安心してもらえる説明をすることこそ最も重要であると考えています。
当院では、視覚に訴えることでより確実な理解につなげようと、診察時は本人のMRI画像のほかに、正常な場合と異常がある場合の画像など実例を提示して、患者さん自身に違いを認識してもらっています。
「自分の脳は萎縮しているのではないか」「脳の大きさに左右差があるのはなぜか」といった、患者さんから頻繁に出る質問などには、図表やグラフのスライドを用意して備えています。
脳卒中の発症には血圧、コレステロール値、糖尿病の有無などさまざまな因子があります。また、旅行に行ったり、スマートフォンで遊んだりすることは、楽しさを感じる一方で気付かないうちに体に疲労物質が蓄積されていく。それによって頭痛が引き起こされるのはよくあることです。
私たちの仕事は、脳の声を翻訳して患者さんに伝えること。診察時には危険因子の説明から発症のメカニズム、生活指導に至るまで資料を用いて説明した上で診断結果をお伝えします。開院から9年目。説明に使うスライドの数は700を超えました。
生活改善やかかりつけ医、家族との情報共有に役立ててもらえるよう、説明に使用した資料は印刷し、コメントを付けて差し上げています。また当院でも、いつ、どの資料を用いて説明をしたのかを記録して次回の診療に役立てています。
―他に大切にしていることを挙げると。
診察時の記録は事務スタッフに任せ、私は患者さんの顔を見て話を聞くようにしています。それもまた受診する方の満足度向上につながっていると思います。
待ち時間は短くありません。それでも「診察室から出てくる人がみんな笑顔である理由が、受診してよく分かった」と患者さんやその家族から言われるのはうれしいことですね。
認知症の人は家族が休みの日にしか来院できないことが多いため、通院の利便性を考えると「毎日でも診療したい」のが本音。将来的にはデイサービスやデイケアなど、高齢者が自分らしく、のびのびとできる環境も整備したいと考えています。
六川二郎記念 さむら脳神経クリニック
沖縄県宜野湾市嘉数2-2-1 広栄メディカルビル1階
TEL:098-897-1177
http://www.samura-clinic.com/