チームを担う"良医"はいかにして育つのか?
1974年に開設した東海大学医学部の一期生。同付属病院がDPC機能評価係数Ⅱで全国トップクラスなのは「ポリシーであるチーム医療を追求してきた結果」であると、長年の歩みを知る飯田政弘病院長は言う。「良医」が育つ背景を聞いてみた。
―教育の特徴は。
当学では、創立時からすでにスーパーローテート制を確立していました。私自身も卒後2年間、現在の初期臨床研修制度と同じように、さまざまな診療科を経験した一人です。
3月、病棟での本格的な臨床実習をスタートする新5年生一人一人に白衣を着せる「白衣授与式」を開きました。学生であっても患者さんの命とプライバシーを預かるのですから、「医師、社会人としてのルールを守り倫理的な行動をしてほしい」と、私は言葉をかけました。
医学部在学中と卒後のシームレスな教育体制は東海大学の特徴です。「名医よりも良医」という理念のもと、早期からスチューデント・ドクターに準じた臨床研修を重ねてもらいます。患者に寄り添った医療への意識を高めてもらうために、医師会と連携して訪問看護の現場なども経験。学内外の臨床の場で、さまざまな医療ニーズを実体験する機会を提供しています。
―近年の動きについて。
昨年、21ある手術室の1室をハイブリッド手術室にするなど、より高度な医療に対応できるようにしました。今年、外来を診療科の状況に応じた配置、ゾーニングにリニューアル。外来化学療法室は36床を45床に拡張し、増設した放射線治療装置によるIMRT(強度変調放射線治療)を積極的に推進しています。
当院の強みであるPFM(ペイシェント・フロー・マネジメント)を担う患者支援センターの入退院支援機能の強化も実施。年内には4床病室のアメニティー向上にも着手します。
昨年から今年にかけて大きな動きが複数あったわけですが、やはりすべてを支えるのは「人と人のつながり」なのです。それぞれの専門職が力を発揮し、一つの目標に集約させるのがチーム医療。人数以上の成果を出すことが目標です。
1975年の開院時から入院病床が「診療科ごとの管理ではない」ことは一つの象徴でしょう。患者さんに応じて治療、看護を集約化しています。病床稼働率は97%程度を推移しており、3月は100%を達成。各診療科の医師、看護部、医療スタッフの協力により、緊急入院の方もできるだけスムーズに受け入れられる体制をつくっています。
診療科間の壁がない大きな理由は2003年、いわゆる旧来型の医局講座制を廃止したことにあります。「内科学系」「外科学系」などに分かれ、私が教授を務める耳鼻咽喉科学は「専門診療学系」に属しています。さまざまな専門領域の医師が一つのグループとしてまとまっているわけですから、横のつながりは非常に強固です。
研究面もそうです。学系や診療科単位で取り組むのではなく医学部、大学院、病院を横断する「ユニット制」を採用しています。研究ユニットの「長」を務めるのは教授に限らず、多様なメンバーが自由に手を挙げて参加することができます。再生医療、ヒトゲノム解析、疾患の予防・診断・治療法の開発など、多くの成果を生んでいます。
大学病院であり、地域の中核病院であるという当院の役割の明確化と、足りないものを補い合う地域連携の取り組みが進んでいます。ここ湘南西部医療圏で医療を完結できる割合は神奈川県内で有数でしょう。
私たちは原則として患者さんを断りません。1次、2次救急の患者さんも可能な限り診療します。DPCの高評価も数字を追いかけたわけではありません。あらゆる患者さんに対応しようと、チームがどれだけ機能したか。助け合うことができたか。その表れだと受け止めています。
東海大学医学部付属病院
神奈川県伊勢原市下糟屋143
TEL:0463-93-1121(代表)
http://www.fuzoku-hosp.tokai.ac.jp/