岐阜・患者情報ネット始動 初年度2万人達成へ
環岐阜地区医療介護情報共有協議会(TGP)が中心となって進める岐阜地区のクラウド型患者情報共同ネットワーク。総務省の補助金を得て、本格スタートへ向けて準備を進めている。登録患者数、参加医療機関、協力企業も増加中。システムの概要や経緯についてTGP会長の松波総合病院・松波英寿理事長に聞いた。
―TGPによるネットワークシステムについて教えてください。
ICTを活用した患者情報の共有ネットワークシステムは全国に約270。しかし課題が多く、実際には有効活用されていないものも多くあります。
そこでわれわれ岐阜地区8市町の医師会などは、臨床現場に即した実用的なネットワークシステムの開発を目指しました。
このシステムではレセプトコンピューターをクラウドにつなぐだけで、閲覧はもちろんデータ送信もできるという双方向の情報共有が特徴となっています。
また、電子カルテが無くても使用できるため、初期投資は不要。クラウド上で共有することで、血液検査などの情報を検査機関から直接電磁データで送ることができるのも画期的なことです。
そして、共有する診療情報は病名、血液検査、処方箋の三つにあえて限定しました。普段の診療でほとんど使わない画像データを省くことで動作が早く利便性が良いのです。
病院、診療所だけでなく歯科医院、薬局、介護者とも情報が共有され、将来的には患者さん自身で情報を見ることもできるようになります。
情報の共有と蓄積ができれば、医療機関は無駄な検査を減らすことができ医療費削減にも直結する。過去の推移を踏まえて正しい診断をすることにもつながります。本当はそれがあるべき医療の形なのです。
医療者、患者さん、家族それぞれにメリットは大きい。何より患者さんにとっては、健康状態や治療の経緯を自己管理できるようになり、主治医以外の医師などにも検査結果を見せて相談しやすくなるのも大きな利点と言えるでしょう。
こういった実用性が認められ、総務省の「クラウド型EHR高度化事業」に採択されました。8月をめどに本格運用を開始します。
―利用登録開始からわずか1カ月で登録者は1万数千人。どのような取り組みを。
まずは健康に関心が高い層に働きかけるのが近道だと考えました。目を付けたのは乳酸菌飲料「ヤクルト」の定期購入者。本社と交渉し、ヤクルトレディの方にパンフレットでシステムの案内をしてもらうことも考えています。
また、地元の食品や医療・健康関連企業、銀行、自治体、商工会議所などの経営者や管理者、職員の皆さんから多数の登録をいただき、協力を得ることができました。
今後も、地域社会全体でTGPネットワークを支えていくために、住民の理解をいただける取り組みを続けます。
初年度目標は対象人口の5%である約2万人。いずれは90%以上の登録、そして全国へ広げていきたいと考えています。
―医療機器の開発にも携わっています。
当法人の研究所である「まつなみリサーチパーク」では、企業と共同で医療機器の開発にあたっています。脈拍をモニタリングできるウエアラブルデバイス「いつでもウオッチ」や在宅でもナースコールのようなアラート機能を使える「マイドクターコール」は商標登録をしました。
実用化に向けてトーカイなど3社と共同で開発、医療機器認証も取得。企業にはすでに在宅医療や慢性期医療に携わる医療機関、介護の現場からの注文や問い合わせが多く寄せられています。
これからも社会医学の観点を取り入れた挑戦をし続けたいと思います。
社会医療法人蘇西厚生会 松波総合病院
岐阜県羽島郡笠松町田代185-1
TEL:058-388-0111(代表)
http://www.matsunami-hsp.or.jp/