福岡大学筑紫病院 向野 利寛 病院長

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個々の死生観をかなえる在宅医療を支援

【こうの・としひろ】 1974 鳥取大学医学部卒業 九州大学医学部附属病院眼科入局 1979 鳥取赤十字病院眼科副部長 1983 産業医科大学医学部眼科 1990 福岡大学医学部助教授福岡大学筑紫病院助教授 2006 同教授 2013 同病院長

―在宅医療に関する取り組みを教えてください。

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 2006年4月に地域医療支援センターを開設。翌年4月には大学病院として全国初の「地域医療支援病院」承認を受けました。

 救急病院である以上、患者さんには治療後、早めに自宅もしくは施設へ移っていただく必要があります。ただ、患者さんの状態によっては、ケアの難しさから、ご家族や施設側が引き受けをためらうという現実があった。何とかしたいという声が看護部から上がり、当院から自宅などへ看護師を派遣することになりました。

 現場に赴き、さまざまな処置の指導をすることで、地域の介護力が向上。これまで施設に行けなかった方や自宅に帰れなかった方が在宅に移行できるようになりつつあります。この取り組みをさらに推進したいという思いから、2017年度には地域医療支援センター内に「在宅支援室」を新設しました。

 在宅医療を推進してきた背景の一つに、院内の現状があります。入院病床稼働率は2018年に入ってから99.8%になるなど常に高水準で推移、常時約200人待ちです。救急車を断らざるを得ない状況が続き、紹介患者さんの受け入れも困難という状況が続いています。急性期から回復期、在宅へという医療形態をつくる上で、地域の協力体制醸成は、喫緊(きっきん)の課題なのです。

―今後の見通しは。

 センターはしばらく兼任スタッフで運営していましたが、この4月から専任の看護師長を配置しました。今後も柔軟に構成を変えていくつもりです。

 高齢化が進む今、院内に看取(みと)りのできる病室を作りたいという思いもあります。在宅療養中は訪問医療や訪問看護をする医療者のサポートをし、最期の看取りは引き受けるような形も提供できればいい。何より個人の死生観を尊重したいというのが、在宅支援を進めてきた一番の思いです。これからも筑紫医師会と協力しながら、在宅医療を支援していきます。

―医師の働き方改革が議論されています。

 時間外労働是正が、医師の質低下につながらないか非常に心配しています。

 医師が大学病院を選ぶ理由は、多様な症例の診察をしたり手術を経験したりできるから。患者さんを診ることで終わりではなく、その後、いかに勉強するかが大切で、助手として手術を見ることで覚えられることもたくさんあります。「学ぶ」時間も「労働」とされるとするならば、その時間を抑制することは、勉強しない医師をつくることにつながりかねません。

 「応召義務」との整合性が取れないという問題もありますし、国民の理解が進んでいないことも課題でしょう。例えばアメリカでは、入院患者の状態が急変した場合、基本的に当直医が診ます。しかし、日本では、「主治医に診てほしい」と言う患者さんやご家族が多い。まだまだ認識が追いついていないと感じます。患者さん側の医師に対する意識を変えていただく必要もあるのではないでしょうか。

―貴院での取り組みは。

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 時間外労働の把握は、福大病院と一緒に進めています。自己申告時間を診療部長がチェックし、「残業代」を支払うという形を構築中です。

 2016年には若手医師全員で、勤務制度についてディスカッションしました。診療科によって忙しさに差がある不公平感と、救急メンバーが疲弊しているという現状から、救急体制の見直しを実施。1年間専任だったICU当直を2017年5月から3カ月交代制に変更しました。

 勤務制度については今後も現場の意見を吸い上げ、定期的に見直していきます。タスクシフトも進め、チーム医療の推進で、医師にとってもより良い勤務環境をつくっていきます。

福岡大学筑紫病院
福岡県筑紫野市俗明院1-1-1
TEL:092-921-1011(代表)
http://www.chikushi.fukuoka-u.ac.jp/


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